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突発性発疹(小児)[私の治療]

No.5227 (2024年06月29日発行) P.44

中野克俊 (焼津市立総合病院小児科副科長)

登録日: 2024-07-01

最終更新日: 2024-06-25

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  • 主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)による感染が突発性発疹である。生後4カ月~1歳に好発する。典型例は約2週間の潜伏期を経て,突然の高熱で発症し,発熱は3~4日程度続き,解熱に伴い体幹から顔面にかけて粒状の紅斑が出現。その後皮疹は四肢に拡大し,色素沈着を残さずに消退する。経過中,気道症状や消化器症状を伴うこともある。不機嫌ではあるものの全身状態は良好なことが多い。HHV-7による感染も突発性発疹あるいはそれに類似した症状を引き起こすが,好発年齢が高く,2度目の突発性発疹と診断される場合もある。突発性発疹は一般的に予後良好で,5~7日間の経過で治癒する。しかし,熱性痙攣,無菌性髄膜炎,脳炎・脳症などの中枢神経合併症を伴うことがあり,頻度は低いが肝炎,血小板減少,心筋炎などの合併症をきたすこともある。

    ▶診断のポイント

    既感染者の唾液中にはHHV-6が排泄されており,年長の同胞や両親からの感染が多いと言われている。乳児期後半にウイルスを含む唾液と接触することで感染・発症する。乳児期後半の生後初めての発熱で,周囲に明確な流行がない場合は突発性発疹であることも多い。約2/3の症例で口蓋垂の根本部分のリンパ濾胞が腫脹・発赤(永山斑)し,診断の参考となることがある。診断の確定には,血清診断やウイルス遺伝子の検出などのウイルス学的診断法を用いるが,典型的な経過で基礎疾患がなければ必ずしも必要としない。解熱せず状態が悪化する,解熱後に再発熱する,解熱せずに発疹が出現してくるなどの場合には,その他の疾患を鑑別する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    一般的に予後良好で自然治癒する疾患であるため,治療は対症療法が中心となる。主症状である発熱に対しては,全身状態が良好なら十分な水分摂取と安静で経過観察する。高熱により水分摂取が困難であればアセトアミノフェンを用い,解熱が得られたタイミングで水分摂取を促し,脱水をきたさないようにする。脱水症状がみられる場合は補液を考慮する。

    突発性発疹は熱性痙攣,痙攣重積,急性脳症などの中枢神経系の疾患を合併することが多い。保護者から見て普段の様子と異なる場合などには,受診するよう伝えておく。痙攣をきたして来院した場合には,抗痙攣薬を用いて止痙を試みる。痙攣が頓挫しない場合や意識障害が遷延している場合には,急性脳症などを考慮して高次医療機関へ搬送する。

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