【概要】来年10月にスタートする看護師の特定行為研修制度について議論していた厚労省部会が17日、報告書をまとめた。議論となっていた気管挿管・抜管は特定行為に含めない。
特定行為の研修制度は、先の通常国会で成立した改正保助看法により実施が決まったもの。特定行為とは、診療の補助のうち、高度かつ専門的知識と技能が必要な医行為のこと。研修を修了した看護師は医師の包括的指示(事前の手順書に基づく指示)の下で特定行為を実施できる。つまり、患者の状態が手順書の範囲内であれば、看護師は医師の判断を待たずに特定行為を行うことになる。
報告書には、「特定行為の内容(別掲)、研修方法」「研修施設の基準」などが盛り込まれており、これに基づき、厚労省が年度内に関係省令を公布。その後、研修機関の募集が始まる。厚労省は各都道府県に1~2つの研修機関の指定を想定している。
●気管挿管、日本麻酔科学会が反対
当初、特定行為案には気管挿管と挿管チューブ抜管が含まれていたが、委員間で賛否が対立。日本麻酔科学会など関係学会からも安全面の懸念から反対意見が出たため、心肺機能停止(CPA)など実施場面を限定し特定行為に含める方向で議論が進んだ。しかし、場面を限定する案を日本麻酔科学会に確認したところ、「事前にCPAの患者を特定し手順書を交付することは困難」などと反対。そのため部会では制度開始時には特定行為に含めず、今後、特定行為を見直す際に再度検討することとした。
なお、当該2行為は、医師の指示の下であれば、これまで通り診療の補助として実施が可能。
報告書はこのほか、研修機関について「専任の研修責任者を配置」などの基準を設定。特定行為に共通の教育内容は「臨床病態生理学45時間」「臨床推論45時間」「フィジカルアセスメント45時間」「臨床薬理学45時間」「疾病・臨床病態概論60時間」「医療安全学30時間」「実践45時間」とした。
【記者の眼】厚労省は制度創設を「在宅医療推進の切り札の1つ」と位置づけ、2025年に向けて10万人以上の研修を期待する。安全性の確保が制度定着の鍵となる。(N)