【「患者の病状に直接影響のある看護」ではない業務の実施が可能】
看護補助者の業務の範囲については,「看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキスト」1)の10頁「図表 4 看護補助者の具体的な業務例」に具体例が示されており,まずはこれを参考に業務の適正性について判断を行います。
また,看護師は,「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする」者であり(保健師助産師看護師法第5・6条)「療養上の世話」と「診療の補助」とされています。「療養上の世話」とは,傷病者又は褥婦に対する食事の介助,清拭等とされており(内閣参質一 九〇第一〇三号),これらの行為を看護師や准看護師以外の者が行うことはできません2)。
ただ,何が療養上の世話に当たるのかについては,国会答弁での返答でなされた食事・清拭のほか,介助,排泄,入浴,移動などが挙げられており,その範囲は明確ではありませんが,あえてその範囲について指針を出すとすれば,「患者の病状に直接影響のある看護」であるかどうかが重要になると考えられます3)。これに当たる場合には,看護師の独占業務となるため,看護師以外がこれを行うことはできません。
これを前提に回答を行います。
①の「医師や看護師の管理下で内視鏡検査中に患者の背中をさすったり声掛けをする」行為は,病状に直接影響のある看護というものではなく,看護補助者でも行うことは可能であると考えられます。
②の内視鏡の生検鉗子の操作は,医療行為であり,また診療の補助ができるものでもないため,そもそも看護師すら行うことはできないものであり,当然看護補助者ができる業務ではありません。
③は日程調整の問題であり,療養上の看護ではなく,単純な予約取得は可能です。ただし,事前説明(前日や当日の食事・絶食の指示等)については,医師の定めた規定を機械的に伝達することは可能ですが,患者からの質問や個別の対処が必要な場合については,行うことはできません。
④は,大腸内視鏡検査の前処置薬を看護師の管理下に,単に渡すだけであるならば可能です。ただし,そもそも前処置薬の用意は,調剤に当たるので,薬剤師の管理下か,担当医師の最終確認の下に用意する必要があります。当然,薬剤についての説明などはできません。
⑤の血液や尿の検査器の使用について,有資格者による独占業務等の制限はなく,血液や尿の検査機器を使用することは可能です。ただし,心電図等の生理機能検査の機器の使用はできず,これを行うと保健師助産師看護師法違反となります。
⑥の医師が設定したスケジュールを再度伝えること,初回予約時に説明することは問題ありません。
⑦の子どもを動かないように捕まえておくことは,医療行為の危険性を下げる行為であり,それ自体が診療の補助と言え,患者に直接触れる行為で,「患者の病状に直接影響のある看護」とも言える可能性があり,明確にこれを違反とする指針はありませんが,極力避けたほうがよいものと考えます。
⑧は,服薬判断を行っているのは医師であり,紙を読み上げるだけなど機械的に伝えるだけであるならば可能です。
【文献】
1)日本看護協会:看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキスト.
[https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/fukyukeihatsu/kangohojyosha-text.pdf]
2)日本看護協会:看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド.
[https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/guideline/way_of_nursing_service.pdf]
3)病院の入院基本料等に関する施設基準 4-(6)-イ 初・再診料の施設基準等.
[https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/5-2-1.pdf]
【回答者】
長谷部圭司 北浜法律事務所・外国法共同事業医師/ 弁護士