脳梗塞後に頻用されるスタチンについて、東アジア人、それも脳梗塞が軽症なら「ストロング」スタチンではなく「スタンダード」スタチンを用いた方が出血は減り、虚血性イベントは増えない可能性が示された。Hai-mei Fan氏らが大規模観察研究の結果として7月9日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。
東アジア人の虚血性脳血管障害例に対する積極的LDL-C低下治療は、ランダム化比較試験(RCT) "Treat Stroke to Target" [Amarenco P, et al. 2020] でもその有用性に疑問が投げかけられていた(韓国人では心血管系イベント減少認めず。減少したのはフランス人のみ)。
今回の解析対象は中国在住で「NIHSS<5」の非心原性脳梗塞発症後、24時間以内に抗血小板薬(単剤/併用)とスタチンを開始した2950例。ただし発症前「mRS≧2」例、血栓溶解療法や血管内療法施行例などは除外されている。8施設が参加した前向きコホートから抽出された。平均年齢は61.7歳、73.3%が男性だった。LDL-Cの平均値は101 mg/dL、総コレステロールでは 163 mg/dLである。
スタチン開始時の内訳は「ストロング」スタチン群が1719例、「スタンダード」スタチン群が1231例だった(1年間の継続率は順に79.5%と78.7%)。
「ストロング」「スタンダード」両群間で「脳卒中」「虚血性脳心血管イベント」「出血」リスクを比較した(観察期間は最長1年間)。
・脳卒中(脳梗塞・脳出血)
その結果、1年間の「脳卒中」発生率に有意差はなかった(両群とも約12%。P=0.581)。「ストロング」群の「スタンダード」群に対するハザード比(HR)も諸因子補正後で1.08(95%信頼区間[CI]:0.86-1.34)だった。傾向スコアで背景因子をマッチさせた群間の比較でも同様で、「ストロング」群のHRは1.16(95%CI:0.89-1.52)となった。
・虚血性脳心血管イベント
「脳卒中・心筋梗塞/狭心症・血管系死亡」で比較しても結果は同様だった。発生率は両群とも14%弱でP=0.426。「ストロング」群の「スタンダード」群に対する補正後HRは1.04 (95%CI:0.85-1.29)だった。
・出血
一方、「頭蓋内出血」は観察開始後3カ月の時点で「ストロング」群の約2.7%に発生し、「スタンダード」群に比べ有意に高リスクとなっていた。諸因子補正後のHRは1.81(95%CI:1.00-3.25)、P=0.048だった。「全出血」も同様で、「ストロング」群のHRは1.44(95%CI:1.08-1.93)だった。両出血のリスク増加は、12カ月間観察後も同様だったという。
Fan氏らは、中等症以上の脳梗塞例まで組み込んだRCTでの確認が必要だと考察している。
本研究は太原鋼鉄(集団)有限公司の科学研究基金プロジェクトから資金提供を受けた。