重症熱中症においては蘇生行為が必要となることもある。
冷却法としては,一般的なものには蒸散法がある。これは,霧吹きを用いて水を細かい粒子にして噴霧しながら,あるいは体表を濡らしたガーゼで覆ったあと,扇風機などで送風して気化熱により体温低下を図るものである。冷却した輸液を用いることも一般的に使用される冷却法である。
加えて,ゲルパッドを用いた水冷式体表冷却や,血管内冷却カテーテルを用いた深部冷却法などがあるが,これらの新たな冷却法を熱中症患者に使用した報告は症例報告のみであり,有効性は十分に検討されていない。
一般的な採血検査に加え,乳酸値を含む血液ガス検査を施行し,臓器障害の有無を確認する。超音波検査によって脱水の評価を行う。
鑑別疾患としては,感染症や,悪性症候群による中枢性高体温,甲状腺クリーゼ,中毒等が挙げられる。
重症熱中症においては,高体温の時間が長くなると予後が不良となるため,できるだけ早期に目標温度に到達することが望ましく,深部体温が38℃台になるまで積極的,迅速な冷却処置を行うことが推奨されている。
重症熱中症により生ずる臓器障害は中枢神経,肝,腎,循環器などの多臓器に及び,これらの各臓器障害に対する十分に検討され確立した治療法はなく,対症療法を行っているのが現状である。
【参考資料】
▶日本救急医学会熱中症に関する委員会:熱中症診療ガイドライン2015. 日本救急医学会, 2015.
https://www.jaam.jp/info/2015/pdf/info-20150413.pdf
西田有正(慶應義塾大学病院救急科)