「職場のストレス」で「元気」になる勤め人はまずいないはずだ。事実、職場ストレスが高いほど冠動脈疾患リスクが上がるとする、9万人超の観察研究が報告されている [Dragano N, et al. 2017] 。同様に心房細動(AF)も、職場におけるストレスで発症リスクが上昇するようだ。ラヴァル大学(カナダ)のEdwige Tiwa Diffo氏らが8月14日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。
「ジョブストレイン」だけでなく「努力-報酬不均衡」まで含めてAFとの相関を評価したのは、本研究が初めてだという。
今回の解析対象はケベック(カナダ)の現役オフィス・ワーカー5926名である。ただし、すでにAFやCV疾患既往のある例は除外されている。観察開始時の平均年齢は45.3歳、51.0%が女性だった。
これら5926例を対象に職場における「ジョブストレイン」ならびに「努力-報酬不均衡」と、その後のAF発症リスクの関係を調べた。「ストレイン」「不均衡」はいずれも、既存の質問票スコアを用いて評価した。ジョブストレインは「仕事への要求度(psychological demand)」と「(自らに許された)裁量の範囲」で評価した(前者が高いほど、そして後者が狭いほどストレインは高い)。
・AF発症率
平均18.4年の観察期間中、1.71/1000人年がAFを発症した(入院、救急受診、紹介で検出)。
・「ジョブストレイン」の高低とAF発症リスク
ジョブストレインは「仕事への要求度」高低と「裁量の範囲」の広狭別で4群に分けた(いずれも質問票スコア中央値で分類)。
その結果、「高ジョブストレイン」(「要求度」高、「裁量」狭)は「低ストレイン」(「要求度」低、「裁量」広)に比べ、諸因子補正後のAF発症ハザード比(HR)が1.83 (95%信頼区間[CI]:1.14–2.92)の有意高値となっていた。
・「努力-報酬不均衡」の有無とAF発症リスク
「努力-報酬不均衡」が「ある」場合(努力/報酬比>1)は、「ない」場合に比べAF発症HRが諸因子補正後で1.44 (95%CI:1.05–1.98)と有意に高かった。
・「ジョブストレイン」「努力-報酬不均衡」とAF発症リスク
さらに、ジョブストレイン「高」と努力-報酬不均衡「あり」が組み合わさると「低」「なし」に比べ、HRは1.97(95%CI:1.26–3.07)まで上昇していた。
感度分析の結果も上記それぞれの解析を支持していた。
Diffo氏らは、職場環境への介入がAF発症リスクを低減できる可能性があると考察している。
本研究はカナダ保健研究所から資金提供を受けた。