【概要】政府は1月27日、認知症に関する関係閣僚会合を開き、「認知症施策推進総合戦略」を決定。安倍晋三首相は「政府一丸となって取り組む」と意欲を表明した。
政府の認知症施策は2013年度から実施する「認知症施策推進5か年計画」(通称、オレンジプラン)があるが、安倍首相は昨年11月、都内で開かれた認知症国際会議で新しい認知症国家戦略(新オレンジプラン)を策定する方針を明らかにしていた。
認知症の有病者数は2012年時点で462万人だが、高齢化の進展により、政府は2025年には約700万人まで増加すると推計。これは、65歳以上の5人に1人が認知症という計算となる。認知症700万人時代の到来を見据え、新プランでは厚労省と関係府省庁が共同で、「認知症の人が地域で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を基本的考え方に位置づけ、2025年までの戦略を7つの柱として打ち立てた(別掲)。
このうち、医療・介護分野に関しては早期診断・早期対応を軸に、容態の変化に対応できる体制整備を目指す。現行プランの数値目標も引き上げた。
●2020年に根本治療薬の治験開始
具体的には、かかりつけ医が発症早期に気付き、専門医への受診を誘導するための研修の受講者数を17年度末までに6万人に増員(13年度末実績3万8053人)。かかりつけ医の認知症診断の相談役を担う「認知症サポート医」の研修受講者数は17年度末までに5000人を目指す(13年度末実績3257人)。また、複数の専門職が包括的・集中的に初期支援を行う「認知症初期集中支援チーム」を18年度からは全市町村に設置する(14年度41市町村)。
このほか、分子イメージングによる超早期診断法を15年度までに確立。さらに20年頃までに、日本発の根本治療薬の治験を開始し、予防法確立を目指した1万人規模の追跡調査も実施する。
27日に安倍首相は認知症患者や医療・介護関係者と新プランについて会談。この中で日本医師会の横倉義武会長は「かかりつけ医は日常診療の中で患者の変化に気づき、専門家につなぐ重要な役割を担っている」と述べ、患者を地域で支える取り組みに積極的に参加する考えを示した。
なお、2015年度予算案は、新プランに関連する事業に約161億円を計上。前年度の関連予算約95億円から大幅に増額した。
【記者の眼】例えば日本の糖尿病有病者数は950万人(12年国民健康・栄養調査)。認知症がそれに近い人数まで増えた時に、いかに医療が対応するのか。戦略発表という花火だけで終わらせずに確実な戦略の実行が必要だ。(N)