株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】日本人ACS例へのエゼチミブ追加でHF発症リスクが低減?:RCT"HIJ-PROPER"追加解析/Circ J誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-09-18

最終更新日: 2024-09-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

急性虚血性心イベント後の心不全(HF)発症抑制には、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)[SAVE試験]やβ遮断薬[CAPRICORN Echoサブ試験]などの有用性が知られているが、スタチンでLDL-Cが十分に低下していない例ではエゼチミブ追加も、LDL-C低下作用とは独立して、HF入院を抑制する可能性が示された。わが国で実施されたランダム化比較試験(RCT"HIJ-PROPER"データ回顧的解析の結果として、東京女子医科大学の吉川将史氏らが911日、Circulation Journal誌で報告した。

【対象】

解析対象となったのは、日本在住で急性冠症候群(ACS)発症から72時間以内、かつ「LDL-C≧100mgdL」だった1721例である(HIJ-PROPER試験参加1734例から、追跡不能となった13例を除外)。平均年齢は66歳、女性は3割弱のみだった。LDL-C平均値は約135mgdLeGFR平均値は74mL/分/1.73m2だった。

心保護薬はβ遮断薬服用率が10.3%RAS-i28.6%だった。なおHF診断歴があったのは2.1%のみである。

【方法】

これら1721例はスタチン単独群とスタチン・エゼチミブ併用群にランダム化され、盲検化されることなく観察された。今回の解析では「HF入院」リスクに群間差が詳細に検討された。

【結果】

・HF入院発生率

その結果、3.9年間の観察期間中、3.4%59例)に「HF入院」を認めた。

・エゼチミブ併用の有無別発生率

エゼチミブ併用群における「HF入院」発生率は2.2%と、スタチン単独群の4.7%よりも有意に低値となっていた(ハザード比[HR]:0.4795%CI0.27-0.81)。両群のカプランマイヤー曲線は試験開始直後から乖離を始め、開始1年半後ほどまで差は開き続けた(その後はほぼ平行のまま推移)。

なおHIJ-PROPER試験メイン解析における「心血管系死亡」の発生率は、エゼチミブ併用群:3.0%、スタチン単独群:3.3%で有意差はない(2016年欧州心臓病学会報告スライド)。

・LDL-C値低下到達値別のHF入院リスク

エゼチミブ併用群におけるLDL-C到達値は65.1mgdL、スタチン単独群では84.6mgdLだった。そこでLDL-C到達値別の「HF入院」リスクをエゼチミブ併用群、スタチン単独群併合で解析した。しかしLDL-C値到達「最低」4分位群と他3群の間に、「HF入院」リスクの差はなかった。

一方「エゼチミブ併用」は、「LDL-C低下率」補正を含む多変量解析においても、「HF入院」リスクを有意に低下させていた。

【考察】

このように「エゼチミブ併用」に伴う「HF入院」リスク低下は、LDL-C低下で説明ができない。そのため吉川氏たちは、エゼチミブによる抗炎症作用に伴う心筋保護作用(マウス)[Kato R, et al. 2015]が、HF入院抑制をもたらした可能性を指摘している。

HIJ-PROPER試験は、日本心臓血圧研究振興会から資金提供を受けた。今回の追加解析にはいずれからの資金提供もないという。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top