左室駆出率(EF)の低下した心不全(HF)を合併した2型糖尿病(DM)に対し、メトホルミンがGLP-1やペプチドYY(PYY)分泌を増加させる可能性が明らかになった。ただし心機能に対する影響は観察されなかった。小規模ランダム化比較試験(RCT)の結果として臨床・基礎医学研究所(チェコ)のVojtěch Melenovský氏らが9月9日、Clinical Diabetes誌で報告した。
RCTの対象となったのは、HFr/mrEF(EF<50%)を合併する2型DM 45例である。平均年齢は58歳、女性は11%のみだった。EF平均値は33.6%、HbA1cは平均6.4%だった。
これら45例はメトホルミン群とプラセボ群にランダム化後、二重盲検法で3カ月間観察され、1カ月の休薬後、クロスオーバーし、さらに3カ月間二重盲検法で観察された。
・インスリン感受性(1次評価項目)
メトホルミン群におけるインスリン感受性(高インスリン正常血糖クランプ下MCR評価)はプラセボ群よりも改善傾向を示すも、有意差には至らなかった(P=0.074)。
・心機能(2次評価項目)
同様にメトホルミン群のEFや左室拡張末期径はプラセボ群と有意差を認めなかった。また同様にE/e′比も、メトホルミン群、プラセボ群とも変化なく、群間差もなかった。
・GLP-1/PYY分泌
一方、標準食負荷後のGLP-1濃度とPYY分泌量はメトホルミン群で、プラセボ群に比べ有意に高値となっていた。AUCの差は順に、53pg/mL/時と107.5pg/mL/時である。
なお体重は、メトホルミン群でプラセボ群に比べ1.2kgの低値となったが、有意差には至らなかった(P=0.053)。
2型DM例メトホルミン服用時の摂食後GLP-1、PYY分泌増加は、過去の小規模RCTでも報告されている[DeFronzo RA, et al. 2016]。そのためMelenovský氏らは、メトホルミンによる糖代謝への作用点は末梢ではなく腸内がメインではないかと考察している。なお、GLP-1濃度が上昇したにもかかわらず、左室収縮能/拡張能に影響がなかった点も注目される。
本研究はEU、チェコからのグラントを受け取った。開示すべき利益相反はないとのことである。