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十二指腸憩室[私の治療]

No.5241 (2024年10月05日発行) P.32

壷井章克 (広島大学病院消化器内科診療講師)

岡 志郎 (広島大学病院消化器内科消化器内科長/教授)

登録日: 2024-10-02

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  • 十二指腸憩室は消化管憩室の中で大腸憩室についで多く発生し,先天性の真性憩室は少なく,その多くは後天的に形成される仮性憩室である1)。大部分は乳頭近傍に発生し,そのサイズは1~3cmと比較的大きく,加齢とともに頻度は高くなる1)。十二指腸憩室の多くは無症状に経過し,臨床上問題となることは少ない。しかし,Vater乳頭近傍に存在する傍乳頭部の憩室では,Oddi括約筋の機能不全と憩室内の食物残渣貯留などによる機械的圧迫により胆汁や膵液の排出が阻害され,二次的に胆管炎,膵炎などの胆道・膵疾患を合併し,Lemmel症候群と呼称される2)。また,頻度は低いものの憩室炎,憩室穿孔や憩室出血の原因となりうる。

    ▶診断のポイント

    十二指腸憩室の発生部位は,そのほとんどがVater乳頭近傍の下行部に発生する。ほとんどが無症状であり,上部消化管内視鏡や検診の胃透視検査などで偶然診断されることが多い。水平部より遠位の憩室は,上部消化管内視鏡では診断が困難であり,小腸造影や小腸内視鏡で初めて診断可能となる。また,憩室が巨大になればCTなどの画像検査でも診断可能である。

    血液検査や自覚症状から急性胆管炎,急性膵炎を疑う場合には,腹部超音波や腹部CTなどの画像検査が必要である。画像検査で十二指腸憩室の存在が疑われれば,Lemmel症候群の可能性を考慮すべきである。

    十二指腸憩室出血の頻度は上部消化管出血の0.06%と非常に稀3)であり,消化管出血診療のpit fallとなりやすいため注意が必要である。吐下血などの顕性の消化管出血症状を有することが一般的であるが,責任憩室が下行部であっても,直視内視鏡では憩室内部が正面視できないことも少なくないため出血源として認識できないことや,水平部より遠位の憩室は通常の上部消化管内視鏡で観察困難な部位であることから,原因不明の消化管出血として対処されることもある。

    十二指腸憩室は巨大であることが多く,食餌の通過速度も速いため,内部に残渣が貯留する頻度は低い。また,胃の近傍であることから相対的に細菌数が少ないこともあり,憩室炎を起こす頻度は低い。

    上腹部痛を主訴に来院した場合,鑑別疾患は多岐にわたる。十二指腸憩室炎,穿孔の可能性も考慮する必要があるため,CTなどの画像検査により憩室周囲の炎症所見,後腹膜腔の気腫の有無を確認する必要がある。

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