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【文献 pick up】SGLT2阻害薬のがん治療関連心機能障害(CTRCD)抑制作用は抗癌剤の種類を問わず?/JACC CardioOncol誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-10-04

最終更新日: 2024-10-04

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がんサバイバーの増加に伴い、「がん治療関連心機能障害」(CTRCD)抑制の重要性が注目を集めている。しかし現時点ではCTRCD抑制作用が確認された薬剤はない。一方、近年CTRCD抑制作用が期待されているSGLT2阻害薬[Chong JH, et al. 2024]は、抗癌剤治療の種類を問わずCTRCD抑制が期待できるかもしれない。米国実臨床データベース解析の結果として、ベス・イスラエル・レイヒー・ヘルス(米国)のAmmar W. Bhatti氏らが922日、JACC CardioOncology誌で報告した。

【対象】

解析対象の母体は、米国医療機関を受診した、心毒性を有する抗癌剤[Curigliano G, et al. 2020]治療下の2型糖尿病95203例である。心筋症や心不全診断歴のある例は除外されている。全国網羅電子健康記録データベースから抽出した。うち9403例がSGLT2阻害薬を服用していた。

【方法】

傾向スコアでマッチしたSGLT2阻害薬「服用」「非服用」群それぞれ8675例間で、CTRCD(心筋症・心不全・要ループ利尿薬静注。ただし虚血性心疾患は除く)発現リスクを比較した。

【結果】

・患者背景

傾向スコアマッチ後の平均年齢は66歳、42%を女性が占めた。心保護薬は、β遮断薬服用率が39%ACE阻害薬は29%ARB 24%ARNi1%未満、スタチンが59%だった。

・CTRCD(1次評価項目)

CTRCD発現リスクは、SGLT2阻害薬「服用」群(発生率:7.45%)で「非服用」群(同:10.9%)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.7695%CI0.69-0.84)。

さらに、SGLT2阻害薬「服用」群におけるCTRCDリスク低下は、抗癌剤治療の種類を問わずに認められた。すなわち、アントラサイクリン系薬剤(HR0.7095%CI0.58-0.85)、モノクローナル抗体(同:0.810.66-0.98)、代謝拮抗剤(0.75、0.65-0.86)、小分子チロシンキナーゼ阻害薬(0.670.54-0.83)、アルキル化剤(0.630.53-0.76)―である。

・心不全増悪/死亡(2次評価項目の一部)

同様に「心不全増悪」もSGLT2阻害薬「服用」群で「非服用」群に比べリスクは有意に低下していた(HR0.8195%CI0.72-0.90)。「総死亡」も同様である(同:0.670.61-0.74)。

【考察】

SGLT2阻害薬によるCTRCD抑制の機序としてBhatti氏らは、細胞内代謝の変化[Verma S, McMurray JJV. 2018]、酸化ストレス/炎症の抑制[Lopaschuk GD, Verma S. 2020]を挙げている。

なおSGLT2阻害薬のCTRCD抑制作用を検討するランダム化比較試験としては、アントラサイクリン系薬剤治療下にある乳癌例を対象とした第Ⅱ相試験“PROTECT”が、20254月終了予定で進行中である[NCT06341842]。

本研究に対する資金提供の有無については、開示がなかった。

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