ブルガダ症候群(Brugada syndrome)は,12誘導心電図のV1,V2誘導で特徴的なcoved型ST上昇,いわゆるtype 1心電図を呈し,主に夜間睡眠中または安静時に心室細動(VF)を発症し,突然死の原因となる疾患である1)。青壮年男性が夜間に突然死する「ポックリ病」の少なくとも一部に関与すると考えられている1)。
臨床診断は心電図診断であり,type 1心電図,すなわちcoved型ST上昇を認めることが必須条件である。type 1心電図は,Naチャネル遮断薬投与の有無にかかわらず,高位肋間記録(V1,V2が第3または第2肋間)を含めた誘導の少なくとも1誘導において,J点またはST部分が基線から0.2mV以上上昇するcoved型ST上昇を認めれば診断可能である2)3)。自然発生type 1心電図,発熱により誘発されるtype 1心電図,薬物負荷試験によるtype 1心電図のいずれかに,原因不明の心停止,VFまたは多形性心室頻拍(VT),夜間苦悶様呼吸,不整脈原性または原因不明の失神のいずれかを認める場合は有症候性ブルガダ症候群,認めない場合は無症候性ブルガダ症候群とされる2)3)。最近のメタ解析により4),遺伝子診断によるSCN5A変異のリスク評価における有用性が報告され,補助診断のひとつとして考慮されている。
治療は,生活指導,VF発作時の急性期治療と慢性期治療にわけられ,それぞれ薬物治療と非薬物治療がある。
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