虫垂は,盲腸につながる盲端の管腔臓器である。糞石(便が石のように硬くなったもの)が詰まったり,虫垂にあるリンパ組織が腫大したりして虫垂内腔が閉塞すると,内圧が上昇して虫垂が拡張し,時間経過とともに,粘膜の炎症から虫垂壁全層の炎症,壊死,穿孔,膿瘍形成や腹膜炎へと進行する疾患である。生涯罹患率は7~8%程度である。
腹痛以外にも,発熱,嘔気,嘔吐,食欲低下,腹部膨満,下痢,全身倦怠感など多くの症状が主訴となるため,これらの症状があれば,否定できるまでは虫垂炎を鑑別疾患に挙げる。腹痛は,虫垂内圧が上昇し,内臓痛(心窩部痛)が生じた後に虫垂壁の炎症・壊死が起こり,腹膜に波及して体性痛(右下腹部痛)となるため,部位が移動するのが典型的である。また,内臓痛による自律神経症状や炎症による腸管蠕動麻痺によって嘔吐が生じることから,腹痛が嘔吐より先に認められる。嘔吐が腹痛より先行する場合は,食中毒や他の疾患を考える。
超音波:腫大した(6mm以上)虫垂を描出できた場合や,憩室炎・卵巣茎捻転・胆囊炎・尿管結石などの他の疾患を診断できた場合には非常に有用であるが,虫垂が描出できない場合に虫垂炎を否定することはできない。
CT:造影剤を使用した場合の感度は96%,使用しない場合でも91%であり,非常に有用な検査である。
MRI:妊娠中の女性で,超音波で診断が確定しなかった場合には,MRIを行うことを推奨するガイドライン1)がある。
Alvaradoスコアが有名で簡便である。症状から,嘔気or嘔吐(1点),食思不振(1点),右下腹部への痛みの移動(1点),身体所見から,右下腹部痛(2点),腹膜刺激徴候(1点),体温37.3℃以上(1点),血液検査から,白血球の左方移動(1点),白血球数1万/μL以上の増加(2点)の合計10点のスコアで,4点以下では感度90%以上で虫垂炎を除外でき,5点以上であれば画像検査を考慮する。
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