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調査報告書の遺族への提出を巡り意見集約が難航、今も調整続く [医療事故調査制度] 

No.4743 (2015年03月21日発行) P.9

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-11-21

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【概要】調査報告書の提出を求める遺族と、調査報告書が紛争ツールになることを危惧する医療従事者─。医療事故調査制度の運用方法を巡る議論が長引いている。論点を整理した。

既報の通り、今年10月にスタートする医療事故調査制度の運用方法について審議する厚労省検討会が2月25日、報告書取りまとめに向けた議論を行ったが、意見集約できなかった。そのため座長が委員の意見を調整し、それでもまとまらない場合に再度検討会を開催することを確認し、会合を終えた。
昨年成立した改正医療法では、医療事故の再発防止と医療安全の確保を目的に、医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、調査報告書を民間の第三者機関に提出することが義務づけられた。
医療法では調査対象を「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産で、施設の管理者が予期しなかったもの」と規定。このうち「予期しなかった死亡・死産」の定義が制度運用にあたり大きな論点だったが、別掲上の考え方で一致。事前に死亡リスクを認識していたか否かの判断基準が固まった。
もう1つの大きな論点だった調査結果の遺族への説明方法は、最終会合まで議論がもつれた。医療事故の遺族や弁護士の委員を中心に、調査報告書の遺族への提出義務化を求める意見が出る一方で、調査報告書が個人の責任追及のきっかけとなり冤罪も生む可能性があり、その影響で医療安全に資する情報が集まらなくなる懸念から、提出義務化に反対する意見が一部の医師や弁護士の委員から出ていた。

●「調査報告書は病院側の都合に合わせがち」
最終会合で厚労省が示した説明方法の案(別掲下)は、遺族への報告書提出を医療機関の努力義務にした。この運用は医療法の解釈を示す通知によって規定するため、 “義務化”は医療法を超える規定となり、それは法律の構造上できないことから、“遺族の納得”という曖昧な表現となったようだ。
会合ではこの案を支持する意見も多く出たが、“納得”の解釈を巡り「報告書を出さないと納得しない場合がある。強制開示と読める文言には反対」「納得という抽象概念は好ましくない。報告書交付が大前提」など、双方の立場から反対意見が出された。
調査報告書の遺族への提出を巡っては、これに反対する要望書が医療事故の元刑事被告人の医師2人から厚労省と日本医師会に提出されている。要望書では、内容に誤りがある院内の調査報告書が発端となり、逮捕・起訴された経験を紹介するとともに、調査報告書は病院開設者側の都合に合わせた内容になりがちであるとの問題を指摘。調査報告書が紛争ツールとして用いられることに懸念を示した。
なお、最終会合から約1カ月が過ぎた現在も、意見集約に向けて委員の意見調整が進んでいる模様だ。

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