(概要) 今年10月にスタートする医療事故調査制度に備えるために、日本医療法人協会が医療現場向けに厚労省の運用指針を解説した『事故調運用ガイドライン案』を公表した。
事故調の運用指針(省令・通知)案については厚労省検討会が3月に報告書を取りまとめており、近く厚労省が報告書に基づき省令・通知を発出予定。
4月25日に鹿児島市で事故調に関するシンポジウムが開催され、検討会委員を務めた日本医療法人協会常務理事の小田原良治氏が講演した。小田原氏は「(医療事故を)訴訟にしたい弁護士が委員にいたので(検討会報告書に)玉虫色の部分があるのはやむを得ない。我々が法律に違反しない範囲でどう運用するかが大事」との考えを表明。その上で運用指針を現場向けに解説したガイドライン案を発表した。
最大の論点だった調査結果の遺族への説明方法は、検討会の中で調査報告書の遺族への提出義務化を求める意見と、調査報告書が個人の責任追及を誘発する懸念から義務化に反対する意見が出ていたが、最終的に「遺族が希望する方法で説明するよう努める」との文言で決着した。この解釈について医法協ガイドライン案は、遺族への調査報告書の交付が適切ではない場合もあるとした(別掲)。
小田原氏は、遺族に調査内容を理解してもらうよう努力する必要性を強調しつつ、「遺族から報告書を渡してほしいと言われたらしっかり考えるべきで、医療裁判外紛争処理として弁護士に相談することも1つの考え方」との見解を示した。
総務課長「一般的な手続きを遡及的に規定」
このほか、検討会の事務局を務めた厚労省医政局総務課の土生栄二課長が講演し、調査対象について説明した。医療法では「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産で、施設の管理者が予期しなかったもの」と規定しており、“予期しなかった”の定義を検討会が議論。その結果、(1)医療提供前に死亡・死産の可能性を説明、(2)医療提供前にカルテなどに死亡・死産の可能性を記録、(3)医療従事者及び院内委員会への意見聴取により、医療提供前に死亡・死産を予期していたことが確認可能─のいずれにも該当しないと管理者が判断した場合とした。
これについて土生課長は、死亡の予期を手続き論として客観的に3類型で整理し、一般的に医療現場で行われている医療の手続きを遡及的に規定したと説明。「この手続きを取ることで、医療事故を防ぐ体制ができることを期待している」と述べた。
【記者の眼】医法協は以前より、医療安全に必要なのは情報の集積と分析で、遺族への説明は医療安全と直接関係ないとの考えを表明しており、今回の案もそれに沿った内容だ。最終版は1~2カ月後に完成予定。(N)