13日には「高齢者糖尿病─ガイドラインの策定を目指して」と題するシンポジウムが開催された。日本老年医学会は5月18日、日本糖尿病学会と合同委員会を設置し、『高齢者糖尿病の診療ガイドライン』の1年以内の策定を目指している。
日本糖尿病学会が2013年に改訂した管理目標は、HbA1c7%未満とすることを推奨する一方、「年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する」こととしている。
シンポでは櫻井孝氏(国立長寿医療研究センター)が、成年期以降の糖尿病は認知症および認知障害のリスクであることを示した上で、高齢者糖尿病患者の認知症発症リスクは、HbA1c7.2~7.6%で最も低く、7.9%以上では有意に増加したというデータを紹介。「高齢者は、認知症予防の視点からHbA1c7%前半を目標とすることは妥当」との考えを示した。一方、「認知症を合併した糖尿病の管理目標値についてのエビデンスは乏しい」としつつ、認知症が進行するとADLの低下やフレイルにつながるとし、低血糖リスクの高い例を含めて「HbA1c8.0%程度を目標とすることがよいのではないか」と述べた。
●高齢者は低血糖を自覚しにくい
横手幸太郎氏(千葉大)は、低血糖を自覚しにくいという高齢者の特性を踏まえ、薬剤選択や用量調整にあたり低血糖リスクを回避する重要性を指摘。さらに、治療介入による効果の発現には長時間を要するため、「余命が限られる高齢者では、QOL維持を主な目的」とし、「患者ごとにリスクとベネフィットを考慮した上で血糖値コントロールと薬物療法の選択をすることが重要」と述べた。
【記者の眼】GL策定のハードルが浮き彫りに
高齢者糖尿病に関する総合討論では、精神的・身体的に多様な患者像を示す高齢者においてガイドライン策定という手法が馴染むのかという懸念が感じられた。高血糖をどこまで許容するかなど、ガイドラインとしてまとめる作業は難航しそうだ。
この難しさは薬物療法ガイドラインも同様。複数の演者から、ガイドラインを参考に主治医が個々の病態や状況に応じて判断する重要性が指摘される一方、フロアからは薬剤を中止するタイミングや方法、患者への説明に悩む声が多く寄せられ、個人差が大きい高齢者医療の特徴が浮き彫りとなった。(T)(K)