賀来満夫東北大院教授(感染制御・検査診断学分野)は1日、都内で開かれたセミナー(ムンディファーマ主催)で講演し、「東日本大震災でみられた感染症の増加は、首都直下地震や南海トラフ地震でも必ず再現される」と指摘した。
賀来氏によると、東日本大震災の発災後はまず、破傷風やレジオネラ肺炎など土壌に住む病原体による感染症が増加。避難所では多くの人が密集して共同生活するため、インフルエンザ、感染性胃腸炎(ノロウイルス)などの感染者が増加した。また、避難所生活が長引くと、口腔ケアが不十分になり、特に高齢者で誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症が増えた。
賀来氏は災害発生後の感染症危機管理で重要なポイントとして、(1)マニュアルやポスターによる住民・医療従事者への情報提供、(2)自治体、学会・医療関係団体と連携した感染リスクのアセスメント、(3)継続的な衛生教育・啓発─を挙げ、「どんな災害 でもこれだけは抜け落ちてはならない」と強調した。
●「感染症対策の災害派遣チームが必要」
賀来氏はまた、感染症危機管理の体制を平時から整える重要性を指摘。「感染症でも災害派遣医療チーム(DMAT)のように機動的に動ける対策チームが求められる」と述べた。