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心外膜アブレーションの可能性

No.4743 (2015年03月21日発行) P.58

因田恭也 (名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学准教授)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

器質的心疾患を有する低心機能症例における心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)に対する治療として,従来は植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)が第一選択で,アブレーション治療はICD作動回数を減らす目的で施行されていたと思います。
近年,いくつかのセンター病院で心外膜アブレーションが行われるようになりましたが,この治療法は今後,一般病院でも必須の手技になっていくのでしょうか。また,心室頻拍の治療方針を将来変えていく可能性があるのでしょうか。心外膜アブレーションを多く経験されている名古屋大学・因田恭也先生のご教示をお願いします。
【質問者】
吉田幸彦:名古屋第二赤十字病院第二循環器内科部長

【A】

心室頻拍の中で,心外膜側に起源を有し,心内膜側からのアプローチでは治療不成功で心外膜アブレーションによって治療に成功する症例が,日本のいくつかの施設から報告されています。私たちもこの方法によって拡張型心筋症,肥大型心筋症,Brugada症候群などの心室頻拍・細動の誘発不能・低下症例を経験しており,心室頻拍アブレーションの成功率は格段に上昇しています。
一方,心外膜アプローチ法には,穿刺法と外科的開窓法とがあります。前者は胸骨下縁より心嚢液の貯留していない心嚢へ穿刺針を進めるもので,難易度の高い手技であり,合併症も多く報告されています。
心室頻拍に対するアブレーションの適応は,日本循環器学会のガイドラインにも記されているように,器質的心疾患に伴うものでは薬物治療抵抗性,ICD作動頻回症例などであり,さらに患者さんの全身状態や施行施設(術者)の経験数などより,リスクとベネフィットを熟慮した上で決定すべきです。
心外膜穿刺法のリスクと低心機能患者であることを鑑み,私たちは施行時には,心臓外科バックアップとともに,補助体外循環装置もすぐセットアップできるようにしています。治す必要のある心室頻拍であれば,外科的開窓法により心嚢へアプローチすることも可能です。
心室頻拍発作によるICD作動回数が減少すれば,予後が改善することも期待され,心外膜アブレーションは今後広まる可能性はあります。しかし,穿刺法による心外膜アプローチは術者の経験を要すること,また症例数が心房細動のように豊富ではないことより,一般病院において広まる可能性は考えにくいと思います。加えて,心外膜アプローチによるアブレーションの現在の目標は発作頻度の減少であり,今後新たな心室頻拍出現も予想されます。
現時点では,器質的心疾患に伴う心室頻拍ではICDは必要であり,アブレーションはその補助的手段として位置づけられています。しかし今後,特発性心室頻拍や一部の器質的心疾患心室頻拍に対する心外膜アブレーションの長期成績がまとめられれば,心室頻拍に対する治療方針も変わるかもしれません。

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