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リード抜去術の適応・合併症

No.4748 (2015年04月25日発行) P.60

庄田守男 (東京女子医科大学循環器内科臨床教授/信州大学医学部循環器内科特任教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

ペースメーカーや植込み型除細動器などのデバイス治療を行った患者さんの経過を長年見ていると,断線などのリードトラブルでリード本数が徐々に増えていく例があります。これまではリードトラブル時にリードを追加するのみでしたが,予後も格段に良くなっており,リード抜去が可能となった現在,当施設でも抜去を行う症例が増えています。若年者など長期にわたりデバイスが必要な患者さんでは,リード抜去術の適応が異なってくることも予想されます。逆に抜去術禁忌症例もあるかもしれません。
そこで,現在のリード抜去術の適応・合併症と,抜去治療の今後の予測を,安全に抜去可能な症例で適応が広がるかどうかも併せて,東京女子医科大学・庄田守男先生にご教示をお願いします。
【質問者】
因田恭也:名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学 准教授

【A】

現在のリード抜去術の適応は主にデバイス感染症です。2008年7月~11年6月までのエキシマレーザーシース市販後調査では,調査対象185例中,84%が感染に対するリード抜去術でした。しかし,今後は非感染症例に対するリード抜去術が増加することが予測されます。
米国のガイドラインではアップグレードやリード断線などに対するリード追加の際,両側鎖骨下静脈や上大静脈の閉塞,または片側静脈閉塞でも反対側植込みができない場合ではクラス1適応,片側静脈閉塞のみの場合はクラス2a適応です。また,静脈閉塞の有無にかかわらず片側4本超,上大静脈5本超のリードが植込まれる状況になる場合にはクラス2a適応です。
これまでは,リード抜去せずに次々と追加をすることで静脈閉塞や三尖弁逆流,血栓塞栓症のリスクをまねく手術が日常的に行われてきましたが,今後はリードもデバイスと同様に交換するという概念が普及すると思います。
これ以外にも,MRI対応デバイス機器の普及に伴い旧式のリードを抜去しMRI対応リードを植込む手技,リードによる疼痛に悩む患者さんの抜去術などへの適応拡大が予想されます。さらに経皮的リード抜去禁忌と考えられている巨大疣贅に対しても,疣贅を吸引摘出する新技術(AngioVac)の登場とともに経皮的手術が可能になります。
重篤な合併症は1~2%と報告されています。日本の市販後調査では,手技中に心タンポナーデ2例,遷延性タンポナーデ2例,敗血症1例を認め,初期成績としては許容可能な発生率でした。デバイス感染症はリード抜去術を行わない場合のリスクと行う場合のリスクを比較した場合,手術をしない場合のリスクのほうが高いことは明らかですが,そのほかの適応に関しては個々の症例でリスクの比較による十分な説明と同意が必要です。

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