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酒さの原因と治療

No.4756 (2015年06月20日発行) P.59

藤本 亘 (川崎医科大学皮膚科教授)

登録日: 2015-06-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,中高年女性に酒さ(赤ら顔)が多くみられるようになったように感じます。顔が真っ赤になったかと思えば,翌日には消退していたりします。
(1) 酒さの原因を説明するのをいささか苦手としています。自然免疫での誘導などに関する見解を患者さん目線でわかりやすくお教え下さい。
(2) 治療について。保険適用外ですが,1%メトロニダゾール軟膏が,海外では高い治療効果が実証され(エビデンスもあります),日本でも一部の医師が使用しているようです。貴院ではどのような治療薬を選択されているのでしょうか。
以上,川崎医科大学・藤本 亘先生のご教示をお願いします。
【質問者】
川上民裕:聖マリアンナ医科大学皮膚科准教授

【A】

(1)原因とその説明
赤ら顔で受診した患者さんで酒さが疑われる場合は,冬に暖房が入るようになって顔がほてることはないか,日光を浴びたあと顔が赤くなって困ったことはないか,など具体的な経験(すなわち患者さん目線)を確認することから話を始めます。赤ら顔になる状況を確認できたら,子どもの頃からか,成人になってからか,など発症時期を確認し,これまで使用していた外用薬を尋ね,確認します。
私たちの施設での後ろ向き調査の結果,女性では20歳代から受診する人が増加しますが,男性では中高年以降での受診が多くなっています。このような疫学調査の結果もふまえて,いまだに酒さの原因は完全にわかっているわけではないことを患者さんにお伝えしています。
近年,酒さの患者さんではToll様受容体2が過剰に発現しているため環境因子により活性化されやすく(敏感肌),その結果,抗菌ペプチドであるカセリシジン産生増強とカリクレイン5によるLL
37を主とする活性ペプチドの産生亢進が血管拡張や炎症をもたらすという仮説が注目されていますが,これを詳しく説明することはありません。
もし患者さんから説明を求められたら,「従来,『体質的要因』とされてきたことが最近『自然免疫』で説明されるようになり,皮膚に備わっているセンサー(感知器)が強すぎると,熱や紫外線で血管が広がりやすくなり,ほてり感が消えなくなるようです」と説明するのはいかがでしょうか。
(2)メトロニダゾール軟膏による治療
酒さには毛細血管拡張型(1型),丘疹膿疱型(2型),鼻瘤型(3型),眼型(4型)があり,薬物治療の対象となるのは1型,2型と4型です。1型,2型に対する治療として外用薬は1%メトロニダゾールもしくは15%アゼライン酸,内服薬はテトラサイクリンが推奨されています。
しかし,外用薬はいずれもわが国の保険適用となっておらず,市販されていないため,私たちは当院薬剤部で調剤した1%メトロニダゾール軟膏を処方しています。基剤は親水軟膏であるためべとつかず,冷却作用も期待できます。
初診時には塩酸ミノサイクリン50~100mg/日の内服を併用し,症状改善を確認できたら1%メトロニダゾール軟膏外用のみで維持します。まだ有効率について詳細な検討を行っていませんが,多くの患者さんが継続使用を希望しており,作用は緩徐で時間がかかりますが,有用な外用薬と感じています。
きわめて重症な酒さの患者さんの場合では,2カ月ほどの治療では改善が得られずドロップアウトすることもあります。酒さ様皮膚炎では多くの例でステロイド外用薬の長期使用が原因であるため,それを中止することが最も重要であることは言うまでもありません。ただ,酒さ様皮膚炎になりやすい人はもともと酒さである場合が多いので,酒さ様皮膚炎の患者さんにも1%メトロニダゾール軟膏を処方しています。

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