私たちは完全奏効後,原則として6カ月ごとのPET/CTを組織型にかかわらず5年間行っています。PET/CTによって無症状での再発を検出でき,早期の救援治療,予後改善の可能性を期待しての方針です。しかし,この方針は一般臨床としては過剰ではないかという点が,最近の学会などでは議論されています。
2014年6月の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)では,この点について議論が行われました(文献1)。
「定期画像診断に賛成」の立場から意見を述べたZelenetzは,以下のように組織型ごとの定期画像診断を主張しました。まず,ホジキンリンパ腫については,定期画像診断による再発の早期発見は全生存率,無増悪生存率のいずれにも影響を及ぼさず,有用でないと結論しました。非ホジキンリンパ腫の約半数を占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫については,定期画像診断において発見された再発例のほうが臨床症状で発見された再発例より予後指標(second-line age-adjusted international prognostic index:sAAIPI)が低く,全生存率は前者で長い傾向を認めたとの報告があります。そのため,完全奏効後2年までの6カ月ごとの定期画像診断は適切であろうとしています。濾胞性リンパ腫については,24カ月以内の早期再発症例が予後不良との報告があり,定期画像診断は有用であろうとしています。
一方で「定期画像診断に反対」の立場から意見を述べたArmitageは,ホジキンリンパ腫での報告を例に挙げ,定期画像診断で発見される再発例は全再発例の一部にすぎず,ほとんど役に立っていないと考えられること,およびリンパ腫において定期画像診断によって全生存率に有意な差を認めた報告は存在しないことなどにより,リンパ腫における完全奏効後の定期画像診断はやめるべき,と主張しました。また,検査費用が高額となることも反対の理由であると述べました。
両者とも,定期画像診断による二次発癌の可能性については,高くないとの意見でした。
私たちが日常診療を行う上で参考にすることの多いNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫/濾胞性リンパ腫/ホジキンリンパ腫においては,治療終了後2年間は6カ月ごとの定期画像診断を推奨しています。これに対して,ESMO(European Society for Medical Oncology)ガイドラインでは,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では治療終了後2年間で3回までの定期画像診断を推奨し,ホジキンリンパ腫では定期画像診断を推奨していません。また,最近報告されたルガノ会議からの報告(文献2)でも,リンパ腫において定期画像診断を少なくともルーチンで行うことには否定的です。
このように,リンパ腫の完全奏効後の定期画像診断については,国際的にも一定の見解が得られていないのが現状です。今後とも各ガイドラインなどに注目していく必要があると考えられます。
【文献】
1) Lynch RC, et al:Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2014:e388-95.
2) Cheson BD, et al:J Clin Oncol. 2014;32(27): 3059-68.