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慢性リンパ性白血病の診断・治療

No.4760 (2015年07月18日発行) P.61

瀧澤 淳 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科学分野准教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)はわが国では稀な疾患と思われます。この疾患の診断や治療方法について,新潟大学・瀧澤 淳先生のご教示をお願いします。
【質問者】
富田直人:横浜市立大学附属病院 リウマチ・血液・感染症内科准教授

【A】

末梢血中に5000/μL以上のリンパ球増多が3カ月以上続く場合,CLLの可能性を考え,細胞形態とフローサイトメトリー(flow cytometry:FCM)検査による免疫形質の確認を行う必要があります。免疫形質がB細胞性の場合,CLLと鑑別を要する疾患として,前リンパ球性白血病(prolymphocytic leukemia:PLL),ヘアリーセル白血病(hairy cell leukemia:HCL),悪性リンパ腫の白血化などが挙げられます。
細胞形態を観察する場合,スメア標本を自然乾燥で作製することをお勧めします。主に小型の成熟リンパ球が増殖し,壊れたスマッジ細胞が目立つ場合,CLLを疑います。自然乾燥により,核小体を有する大型のPLL細胞や全周性の突起を有するHCL細胞との鑑別が容易になります。
FCM解析にてCLLはB細胞表面抗原(CD19, CD20, CD23)とともにCD5を発現していますが,CD20発現が弱いことが特徴です。免疫グロブリン軽鎖の偏り(κかλか)によりクローン性が証明されます。
通常は経過がゆるやかで無症状のCLLに対して,いつ治療を開始するか悩むところですが,症候性・活動性病態を有する患者さんや,進行期(改訂Rai分類のⅢ期・Ⅳ期またはBinet分類C期)の患者さんは治療適応となります。IWCLL(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia)改訂ガイドラインによると,症候性・活動性病態とは骨髄機能低下による進行性の貧血・血小板減少,進行性・症候性の脾腫またはリンパ節腫脹,2カ月間に50%を超えるリンパ球増多またはリンパ球倍加時間6カ月未満,ステロイド治療抵抗性の自己免疫性貧血や血小板減少症,CLLに起因する体重減少,倦怠感,発熱,寝汗などの症候の出現,のいずれかに該当する場合です。
治療選択を考える際には,患者さんの合併症やPSなどの詳細な全身状態の把握と,FISH(fluorescence in situ hybridization)解析によるCLL細胞の17p欠失の有無を調べる必要があります。欧米ではFCR(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ)療法やクロラムブシル+オビヌツズマブ併用療法など,抗体薬を併用した免疫化学療法が第一選択になっていますが,クロラムブシルやリツキシマブなどの主要な薬剤が,わが国では現時点で未承認のため,使用困難です。
わが国では未治療例に対しては全身状態に応じて,フルダラビンとシクロホスファミドの併用あるいは単剤治療を選択し,17p欠失がある若年者の場合は長期生存をめざして同種移植の適応を考慮する必要があります。再発・難治例に対しては,ヒト型抗CD20モノクローナル抗体であるオファツムマブが使用できます。オファツムマブは輸注関連毒性が強く発現することがあり,予防的なステロイド投与が推奨されています。
最近,海外の比較試験により,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬であるイブルチニブが17p欠失例を含めて有効であることが示されており,わが国への早期導入が望まれます。

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