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掌蹠角化症に対する診断・治療のポイント

No.4769 (2015年09月19日発行) P.64

乃村俊史 (北海道大学病院皮膚科)

登録日: 2015-09-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

掌蹠角化症で悩んでいる患者さんが多数おられ,診断・治療に苦慮しています。
(1) 遺伝性疾患と後天性疾患の鑑別方法,遺伝性疾患の中でも特徴ある病型とその鑑別方法を。
(2) 掌蹠角化症の診断において,注目すべきこと。
(3) 患者さんへの生活指導と治療のポイント。
以上,北海道大学・乃村俊史先生のご教示をお願いします。
【質問者】
足立厚子:兵庫県立加古川医療センター皮膚科部長

【A】

掌蹠角化症は,先天性あるいは後天性に掌蹠に過角化をきたす疾患の総称です。先天性と後天性の区別は皮膚症状,他臓器症状,家族歴,遺伝子変異などを参考にして判断しますが,先天性のほとんどは乳幼児期から小児期に発症しますので,通常は,小児期までに発症していれば先天性,成人発症であれば後天性と考えます。後天性の掌蹠角化症は,薬剤性のもの,悪性腫瘍や全身疾患に随伴するものなど,その原因は多彩なものなので,小児期発症であっても,もちろん後天性である可能性を完全には否定することはできません。
診断にあたって最も注目すべき点は,皮疹の分布です。まず,掌蹠の過角化のパターンにより,びまん型と限局型の2型に分類します。日本人の掌蹠角化症患者を診察する場合,掌蹠全体が侵されるびまん型であれば,長島型掌蹠角化症,フェルネル型掌蹠角化症,ウンナトースト型掌蹠角化症を,掌蹠の一部のみが侵される限局型であれば,線状掌蹠角化症,先天性厚硬爪甲症,点状掌蹠角化症を考えます。
びまん型のうち,フェルネル型掌蹠角化症とウンナトースト型掌蹠角化症は過角化が掌蹠に限局しますが,長島型掌蹠角化症では病変が掌蹠を越えて手背や足背,手首,足首に連続性に認められることが特徴で,過角化に加えて紅斑が目立ちます。フェルネル型掌蹠角化症とウンナトースト型掌蹠角化症は,病理組織学的に顆粒変性があれば前者,なければ後者と診断します。
限局型の場合,過角化の一部が特に手指で線状を呈する場合は線状掌蹠角化症,著明な爪甲肥厚を伴う場合は先天性厚硬爪甲症,個疹が点状の過角化である場合は点状掌蹠角化症と診断します。
このうち,長島型掌蹠角化症,フェルネル型掌蹠角化症,線状掌蹠角化症,先天性厚硬爪甲症,点状掌蹠角化症は原因遺伝子が明らかになっていますので,遺伝子解析で確定診断が可能です。病型ごとの頻度は人種によって異なりますが,日本人では長島型掌蹠角化症が最も多く,約1万人の患者がいると推測されています。
先天性掌蹠角化症に対する根治的な治療法は現時点では存在しないため,治療には難渋することが多いのですが,外用薬(サリチル酸ワセリン,尿素,活性型ビタミンD3 ,ヘパリン類似物質など)がよく用いられます。重症例では,ビタミンA誘導体(エトレチナート)の内服を行うこともあります。また,本症は表在性皮膚真菌症を合併しやすいため,必ず検鏡を行い,真菌陽性例では抗真菌薬の外用を追加します。長島型掌蹠角化症では多汗症を伴うことが多いため,塩化アルミニウム水溶液を外用することもあります。
掌蹠角化症は外力により悪化しますので,過度な運動は避けるよう指導します。また,先天性掌蹠角化症は,加齢とともに少しずつ症状が悪化することが多く,自然治癒は期待できません。一方,後天性掌蹠角化症は,原因の除去や原疾患の治療により,改善が期待できます。

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