【Q】
当方,アレルギー専門医ではなく,エピペンRの処方経験もない開業医である。
(1)即時型アレルギー症状で開業医を受診した小児が,ほかの医療機関で処方されたエピペンを所持していた場合,開業医自身がこれを接種することに問題はないか。また,医療機関の外来で,本人あるいは保護者が接種することはいかがか。
(2)小児に対してアドレナリン筋肉注射を行う場合,最適な注射部位はどこか。
(3)小児に対してアドレナリン筋肉注射を行う際,注意・禁忌となる基礎疾患はあるか。
(4)自宅などでエピペンを打った小児が開業医や夜間急病診療所などを受診した場合,いかなる対応をとるべきか。抗アレルギー薬やステロイドを内服させ,翌日にエピペン処方医を受診することでよいか。あるいは,二相性反応の可能性も考慮して,入院施設のある医療機関へ転送すべきか。(群馬県 M)
【A】
(1)即時型アレルギー症状患者がエピペンを所持していた場合の対応
エピペンは元来,アナフィラキシーに対するプレホスピタルケア(病院前救護)を目的として処方される薬剤であり,ボスミンRと比較して薬価もはるかに高い。したがって,たとえ患者への教育という点を考慮したとしても,医療機関におけるアドレナリン筋肉注射は,エピペンではなくボスミンを使用し,医療者が実施することが望ましい(文献1)。
(2)小児に対してアドレナリン筋肉注射を行う場合の最適な注射部位
大腿部の前外側は,筋肉注射が可能な部位の中で最も面積が広く,確実に筋肉内への投与を行いやすい。また,安全性にも優れていることから,年齢にかかわらずエピペンは大腿部の前外側に接種する。医療者が実施するボスミンの筋肉注射についても大腿部の前外側が望ましいが,3歳以上では上腕三角筋部への接種も可能である(文献2)。
(3)小児に対してアドレナリン筋肉注射を行う際の注意・禁忌事項
小児においてアドレナリン投与が禁忌となる状況は少ないと思われるが,甲状腺機能亢進症,重症不整脈の既往,禁忌薬剤投与中(ブチロフェノン系・フェノチアジン系などの抗精神病薬,α遮断薬)などは,小児でも注意すべきである。詳しくは添付文書を参照されたい。また,注意欠陥/多動性障害治療薬のアトモキセチン塩酸塩を投与中の場合は,アドレナリンなどのβ受容体刺激作用を有する薬剤投与により心拍数・血圧の上昇作用が増強する可能性があるため併用注意とされており,こちらにも気をつけておきたい。
(4)自宅などでエピペンを打った小児が開業医や夜間急病診療所などを受診した場合の対応
アドレナリン投与を必要とする強いアレルギー症状を認めた場合は,二相性反応を考慮して入院による経過観察が望ましいと考えられる(文献3)。したがって,受診時点で認められる症状に対して治療・処置を行い,その後,速やかに入院可能な医療機関に搬送することを原則とすべきであろう。なお,受診時点でアナフィラキシー症状が持続または再燃している場合は,初回投与から10~15分以上経過していればアドレナリンの再投与が可能であるため(文献3),必要であれば躊躇せず投与するべきである。
【文献】
1) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2012.宇理須厚雄, 他 監. 協和企画, 2011, p73-4.
2) 庄司健介:小児内科.2013;45:100-1.
3) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2012.宇理須厚雄, 他 監. 協和企画, 2011, p75-7.