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年齢を考慮した骨粗鬆症の骨折リスク評価法

No.4721 (2014年10月18日発行) P.65

折茂 肇 (医療法人財団健康院理事長/健康院クリニック院長)

登録日: 2014-10-18

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

骨粗鬆症の骨折リスク評価ツールにFRAXRが取り入れられている。この評価法を用いて骨粗鬆症性骨折確率が15%以上という結果が出た場合は治療を開始する必要があるとして,1つの治療基準が示されている。しかし,この評価法は年齢により差があると思われる。この点も含めて骨粗鬆症の骨折リスク評価を具体的に。
(大阪府 I)

【A】

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」(文献1)に,骨折リスク評価ツールであるFRAX(文献2)が骨粗鬆症の薬物治療開始基準に取り入れられた。
注意すべきことは,FRAXが単独では採用されていないことである。FRAXが用いられるのは,まだ骨粗鬆症性骨折が発生していない段階であり,骨密度測定値が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の80%未満(骨量減少)である場合である。つまり,骨密度測定値としてはいわば「グレーゾーン」のときに追加情報として用いられる。その際のFRAXのカットオフ値は主要骨粗鬆症性骨折(臨床脊椎骨折,大腿骨近位部骨折,前腕骨骨折,上腕骨骨折)の10年以内の発生確率が15%とされている。その根拠は,複数の医療機関において2006年版ガイドラインにしたがって薬物治療を受けている骨粗鬆症患者の主要骨粗鬆症性骨折確率が,約15%であったことによる。さらに,FRAXの数値は年齢に依存するところが大きいので,FRAXの使用は50歳以上75歳未満に限るとしている。
なお,このガイドラインでは,骨密度がYAM 80%未満である場合には,FRAXと並んで,「両親いずれかの大腿骨近位部骨折」という家族歴がある場合も薬物治療を検討することを提案している。
骨粗鬆症は骨強度の低下によって骨折リスクが上昇した状態であり,骨強度は約7割が骨密度,残りの3割がそれ以外の因子,いわゆる骨質で決定されている。骨粗鬆症の診断は骨折リスクの評価に基づくものであり,骨密度測定は骨粗鬆症の診断に必須なものである(文献3)。
骨粗鬆症性骨折がまだ発生していない場合は,YAM70%未満の症例を骨粗鬆症と診断する。一方,椎体骨折か大腿骨近位部骨折を既に起こしている場合には,骨密度の測定結果にかかわらず骨粗鬆症と診断する。これは,これらの骨折を有することは骨密度とは独立した因子として,骨折リスクを有意に上昇させるからである。
そのほかの部位(前腕,上腕,下腿,肋骨,骨盤)に非外傷性骨折がある場合には,骨密度がYAM 80%未満の症例に限り骨粗鬆症と診断する。
以上述べたごとく,現時点では,骨密度,既存骨折の有無と種類,FRAX,大腿骨近位部骨折の家族歴,の4つの項目が骨粗鬆症の診断や薬物治療の開始基準に用いられている。実臨床においてはこれらに加えて,年齢,性,日常生活活動度,続発性骨粗鬆症の原因疾患,骨代謝マーカー,併存症などを考慮して,その患者に最適な治療方法を決定するのがよい。

【文献】


1) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版. ライフサイエンス出版, 2011.
2) FRAX WHO骨折リスク評価ツール. [http://www.shef.ac.uk/frax/tool.jsp lang=jp]
3) 日本骨代謝学会, 他:Osteoporo J. 2013;21(1):9- 21.

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