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降圧薬が適応となる血圧範囲

No.4724 (2014年11月08日発行) P.53

伊藤貞嘉 (東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座 腎・高血圧・内分泌学分野教授)

登録日: 2014-11-08

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

47歳,女性。普段,血圧が90/60mmHgであったが,1年前に更年期が始まってからは120/70mmHgくらいに上がり,頭が重く,肩が張り,めまいもして体調が良くない,と言うのでブロプレスR4錠を投与したところ,血圧が100/60mmHgくらいになり,上記の症状がすっかりなくなった。しかし,ブロプレスを中止するとまた血圧が少し上がり,同じ訴えをする。
このように120/70mmHgくらいの血圧でも,ブロプレスを投与したほうがよいのか。ほかの治療法があれば,併せて。 (青森県 W)

【A】

血圧の分類は「高血圧治療ガイドライン」に記載されている通りであり,通常120/70mmHg程度の血圧では治療の対象にならないと考える。ただし,それまで,90/60mmHg程度の血圧が120/70mmHgまで上昇するということは,何かしらの原因(たとえば腎動脈狭窄)がある可能性がある。
一般に加齢とともに血圧が上昇するときは徐々に上昇し,自覚症状を伴うことはない。本例は血圧の上昇がどの程度の速度で起こったのか定かではないが,自覚症状を伴っていることを考えると比較的急速である可能性がある。
この症例はブロプレスで血圧が100/60mmHg程度まで低下し,症状は消失するが,中止するとまた症状が出現するとのことであり,血圧と自覚症状の関連が考えられる。一度,更年期障害や生活習慣の変化も含め,血圧上昇とこの自覚症状の原因を専門的観点から検討してみることも必要であろう。家庭血圧を測定してもらい,血圧の変動性などをチェックすることも勧められる。
このような症例は標準的な考えで診察することは困難であり,自覚症状,生活の質などの総合的観点から個別に対応することになる。血圧に関しては,血圧上昇のはっきりとした原因やほかの臓器障害がなければ,基本的には降圧療法の対象とはならないと判断される。
【参考】
▼ 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, 編:高血圧治療ガイドライン2014. ライフサイエンス出版, 2014.

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