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高血圧症に対する頭部MRI/MRAの必要性

No.4749 (2015年05月02日発行) P.61

高橋伯夫 (関西医科大学臨床検査医学講座教授)

登録日: 2015-05-02

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

20歳代と30歳代の高血圧症の知り合いがくも膜下出血で亡くなりました。主治医からは「若いから経過観察でよい」と言われていたようです。患者が若年の場合も含め,高血圧症に対する定期検査として頭部のMRI/MRAを行ったほうがよいでしょうか。あるいは,脳ドックの話題提起のみでよいのでしょうか。 (千葉県 K)

【A】

2014年4月に発表された日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」(文献1) では,高血圧患者においては臓器障害の評価法としてMRI/MRAを含めた幅広い検査の実施が推奨されています。しかし,現実には「高血圧症」の病名のみで頭部MRA検査を受けることは保険診療上認可されません。したがって,不安を感じる場合に脳ドックのような保険外診療を受診する以外に診断の術はありません。なぜなら,未破裂脳動脈瘤は一般的に無症状であるため,疑い病名を付けることもできないからです。ただし,内頸動脈にある大きな瘤により動眼神経麻痺をきたす例や,径が25mmを超える巨大な動脈瘤により圧迫される脳の病変部に由来する症状をきたす稀にある例に対しては,頭部MRIやMRA検査は必須です。
今回の質問とは直接関係ありませんが,動脈瘤の破裂を予防する最も有効な手段は,血圧を低くコントロールすることです。「高血圧治療ガイドライン2014」では,若年者高血圧で早期に治療を開始することが,高齢での治療開始より恩恵が大きいことが示されています。「若いから」という理由で経過観察するのではなく,診断基準を満たしていれば,直ちに降圧療法を開始すべきであり,それがくも膜下出血の予防となります。

【文献】


1) 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, 編:高血圧治療ガイドライン2014. ライフサイエンス出版, 2014, p10-1, 26-7.

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