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白血病発症に対する喫煙の影響

No.4762 (2015年08月01日発行) P.68

片野田耕太 (国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計研究部がん統計解析室室長)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

白血病・リンパ腫,特に急性白血病や慢性骨髄性白血病について,喫煙が発症頻度を有意に増加させる,という報告があります。この根拠となる疫学的な研究報告があれば,ご教示下さい。 (埼玉県 S)

【A】

喫煙と白血病との関連については,国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)および米国公衆衛生総監(Surgeon General)が科学的証拠を総括して評価しています。いずれの報告においても,急性白血病は喫煙と因果関係があるとされています。
IARCのモノグラフ83巻では,症例対照研究とコホート研究それぞれ約10の文献に基づいて,喫煙者では非喫煙者と比べて骨髄性白血病のリスクが1.6倍以上になり,明確な量反応関係がある(喫煙本数が多いとリスクが大きい)と報告されています(文献1)。生物学的機序については,たばこ煙に白血病誘発物質(たとえばベンゼン)が含まれるという知見によって支持される,としています。なお,リンパ性白血病・リンパ腫についてはリスクを示す明確な証拠はない,としています。
米国Surgeon General報告(文献2) では,症例対照研究とコホート研究それぞれ20以上の文献に基づいて,喫煙と急性骨髄性白血病との間に因果関係を推定する十分な根拠があり,量反応関係がある,としています。リスク比については生涯喫煙者(ever smoker)で非喫煙者の1.3~1.5倍,1日1箱を超える喫煙者で非喫煙者の2倍としています。たばこ煙に含まれる原因物質については,ベンゼンに加えてポロニウム-210および鉛-210を挙げています。

【文献】


1) International Agency for Research on Cancer, World Health Organization:IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans. 2004;83:821-32, 1183.
[http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol83/mono83.pdf]
2) Centers for Disease Control and Prevention:The Health Consequences of Smoking. Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office on Smoking and Health, 2004, p252-95.

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