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予防接種後に熱性痙攣を起こした児に対する次回接種

No.4765 (2015年08月22日発行) P.60

薗部友良 (育良クリニック小児科顧問)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

子どもに対するワクチン接種は可能な限り同時接種で行い,副反応で多少の熱が出ても,予定通り次回接種を行っています。因果関係ははっきりせずとも,同時接種後に熱性痙攣を起こしてしまった場合,次回以降の接種はどうすればよいでしょうか。
可能であれば薗部友良先生にご回答をお願いします。 (千葉県 K)

【A】

ご質問は原因ワクチンを特定できない同時接種後の単純型熱性痙攣既往児に対しての,次回接種時の対応のことと思います。2015年3月に小児神経学会より『熱性けいれん診療ガイドライン2015』(文献1)が発表されましたので,詳しくはこれをご覧下さい。ガイドラインによりますと,既往児はすべてのワクチンを接種することが可能です。ただし,個別にワクチンの有用性と起こりうる副反応および具体的な対策などを事前に保護者に十分説明して,同意を得ておくことが必要です。
熱性痙攣の再発は,家族歴,1歳未満の発症などの再発予測因子がある場合の頻度は30%で,これらがない場合は15%とされています。アセトアミノフェンには熱性痙攣再発を予防できるエビデンスはないとされています。また,発熱時の抗痙攣薬(ジアゼパム)の投与は,有効性は高いものの,副作用も存在するので,ルーチンに使用する必要性はないとされています。
初回発作からの経過観察期間は,速やかに接種してもよく,長くとも2~3カ月程度にとどめておくとのことです。
このガイドラインでは,現在の標準的な接種法である複数ワクチンの同時接種については言及されていませんが,同時接種は多種類のVPD(vaccine preventable diseases:ワクチンで防げる病気)に対して早期に免疫を付与できること以外に,保護者の利便性を高めるなど多くの利点があります(文献2,3)。
まず同時接種の際に,一般にはワクチンの組み合わせにより発熱率を高めることはないとされます。そして,受診回数を減らすことで,紛れ込み事故を減らすことにもつながります。定期接種ワクチンを含む同時接種で,その健康被害の原因ワクチンが不明の場合は,予防接種法による救済制度と民間保険の救済の適用を受けることが想定されています(文献3)。
接種医は,「適切な時期の免疫獲得」という予防接種の目的と上記のような接種後の対策を保護者に再認識してもらい,接種を受ける児にとって最適の接種方法を選択するべきと思います。次回も,了解が得られれば,抗痙攣薬予防投与の有無を問わず,同時接種で行うのがよいと思います。

【文献】


1) 小児神経学会:熱性けいれん診療ガイドライン2015. 熱性けいれん診療ガイドライン策定委員会, 編. 診断と治療社, 2015.
2) 藤岡雅司:まるわかりワクチンQ&A. 中野貴司, 編著. 日本医事新報社,2015, p96-7.
3) 中野貴司, 編著:予防接種コンシェルジュ. 中山書店, 2015, p37-42.

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