【Q】
80歳以上の高齢関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者に対する減薬のしかたについて教えて下さい。メトトレキサート,ステロイド,サラゾスルファピリジンを服用中で,疼痛がなく,寛解している場合はいかがでしょうか。
(和歌山県 T)
【A】
高齢者では,免疫機能や臓器機能が低下していることから減薬の可能性を常に考慮することが肝要ですが,寛解が維持されているRA患者における抗リウマチ薬(disease-modifying anti-rheumatic drugs:DMARDs)の減量・中止についてのエビデンスは十分ではなく,またRAが治癒状態なのか,薬剤によって制御されている状態なのか見わける臨床的指標もないのが現状です。
服用中の薬剤に関してですが,質問にある薬剤の中ではまずステロイドから減量・中止していくことが推奨されています1)。特に高齢者RAでは感染や骨粗鬆症による骨折リスクが高くなるのでなるべく減量を試みることが必要です。ただし,長期に投与されている場合には一定量以下への減量が困難なことも少なくありません。次に,サラゾスルファピリジンはメトトレキサートとの併用効果がありますが,エスケープ現象をしばしば示すことも知られているため,長期投与やメトトレキサートが追加併用された症例では,減量・中止を試みてもよいかと思われます。
最近行われたDMARDsの減量・中止に関するランダム化比較前向き研究では臨床的寛解状態にあるRA患者を,DMARDs継続群,DMARDs減量群,DMARDs減量後中止群の3つに無作為に振りわけ,1年経過観察しています2)。全体の約80%の患者でメトトレキサートが,約40%で生物学的抗リウマチ薬が投与されていました。それぞれの群の再燃率は15.8%,38.9%,51.9%で,生物学的抗リウマチ薬の有無で再発率に差はありませんでした。したがって,メトトレキサート減量・中止は再燃のリスクを2~3倍以上に上昇させましたが,逆に約半数で中止後も寛解が維持されていたことになります。メトトレキサートについては,高用量で寛解導入したのなら,6~8mg/週以下への減量をまず考え,疾患活動性,感染症のリスク,腎機能などを考慮しつつ,その後の減量・中止を検討するのが妥当かと思われます。
1) Smolen JS, et al:Ann Rheum Dis. 2014;73(3):492-509.
2) Haschka J, et al:Ann Rheum Dis. 2016;75(1):45-51.