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発熱性好中球減少症における抗菌薬のde-escalation可否

No.4699 (2014年05月17日発行) P.61

神田善伸 (自治医科大学附属さいたま医療センター血液科教授)

登録日: 2014-05-17

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

臨床症状から感染症を疑い経験的に広域感受性がある抗菌薬を投与する場合,投与した抗菌薬が臨床的に有効と考えられても,後日同定された起炎菌と感受性検査の結果からde-escalationを行うのが一般的ですが,造血器腫瘍の化学療法後,好中球減少時期の発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)にも,同様のde-escalationを行うべきでしょうか。好中球減少が高度で長期に継続すると予想されれば,起炎菌,感受性が判明しても臨床的に有効と考えられたbroad spectrumの抗菌薬は継続できますか。自治医科大学附属さいたま医療センター・神田善伸先生に。
【質問者】
下田和哉:宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野教授

【A】

FN患者においては,一般の免疫力の保たれた患者における感染症とは異なる対応をすべきかと考えます。米国感染症学会の「好中球減少を呈する癌患者に対する抗微生物薬の使用に関する実践的臨床ガイドライン」(通称,FNガイドライン)には,FN患者に対する広域抗菌薬による経験的治療後に感染症が同定された場合の対応に関する推奨が記載されています。
例えばグラム陰性菌による血流感染症が同定された場合は,βラクタム (あるいはカルバペネム)とアミノ配糖体(あるいはフルオロキノロン)の併用への変更を推奨しています。経験的治療ではβラクタムの単剤投与が行われていることが多いので,むしろ治療としてはde-escalationとは反対の方向に向かうことになります。患者の状態が落ち着いて,かつ感受性が明らかになれば,βラクタムの単剤投与に切り替えます。肺炎を発症した患者にも同様の併用療法を行いますが,重症例ではさらにバンコマイシンあるいはリネゾリドを追加します。グラム陽性菌による血流感染症や軟部組織感染症が同定された場合は,感受性が確定するまでは経験的治療で投与している薬剤にバンコマイシン(あるいはリネゾリドやダプトマイシン)を追加することが推奨されています。
これら感染症への治療は少なくとも2週間,好中球が500cell/mm3に回復するまで継続します。この間,解熱し安定していれば抗菌薬のスペクトラムを狭めることは可能と記載されていますが,好中球減少期間は最低でもキノロンの経口投与が推奨され,免疫力の保たれた一般患者でのde-escalationに該当する対応を行うことはありません。

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