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糖尿病合併CKD患者への食事指導

No.4713 (2014年08月23日発行) P.56

和田隆志 (金沢大学大学院医薬保健学総合研究科血液情報統御学教授)

登録日: 2014-08-23

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」には,CKD患者の食事療法として,具体的な数値は記載されていません。本文中には,推奨される蛋白質摂取量として,「標準的治療としてのたんぱく質制限は,0.6~0.8g/kg・標準体重/日で指導することを推奨する。軽度の腎機能障害では,0.8~1.0g/kg・標準体重/日から指導を開始してもよい」と記載されています。
一方で,糖尿病性腎症患者では,蛋白質摂取制限による腎保護効果が認められないことが,Cian-ciarusoやKoyaらの研究で示されています。糖尿病患者の蛋白質摂取量を制限すると,炭水化物や脂質によるカロリー摂取量の増加もあり,血糖コントロールにも問題が生じる症例もあります。
糖尿病合併CKD患者に具体的にどのような食事指導をするのがよいか,厚生労働省「糖尿病性腎症ならびに腎硬化症の診療水準向上と重症化防止にむけた調査・研究」研究班班長の金沢大学大学院・和田隆志先生にご回答をお願いします。
【質問者】
今井圓裕:中山寺いまいクリニック院長

【A】

今井圓裕先生が改訂委員長を務められた「CKD診療ガイド2012」第14章「糖尿病患者の管理」では,「総エネルギー摂取量はCKDステージG1~G2で25~30kcal/kg/日にて個々に応じて制限すること,CKDステージG3以降では,腎機能低下に応じて軽症では0.8~1.0g/kg/日,重症では0.6~0.8g/kg/日の蛋白質摂取制限を行い,個々に応じて25~35kcal/kg/日の総エネルギー摂取量とする」と記載されています。
蛋白質の摂取制限を強化する場合は,十分なエネルギーの確保が必要です。ただし,BMI 25以上の肥満症例では,減量のためのエネルギー摂取制限と蛋白質摂取制限を相当に強化する必要があり,その際に窒素平衡が負になる可能性があります。したがって,減量との有益性を考慮して慎重に調整する必要があります。その場合,日本肥満学会の推奨する適切な総エネルギー摂取量の制限を行うことが推奨されています。
これまでの低蛋白食の有効性についての科学的根拠は十分ではありません。1型糖尿病に伴う腎症に対する蛋白質制限食は腎症の進展を抑制する可能性が示されています。一方,食事の蛋白質摂取制限は,2型糖尿病を含めたメタ解析では腎機能には有意な変化はなかったものの,蛋白尿減少効果はみられています。しかしながら,上記のようにステージの進行により,高リン血症,高カリウム血症の原因となるため,食事の蛋白質摂取制限は必要かと思います。また,高齢化,薬の進歩,生活習慣の変化など社会背景が変化しており,アルブミン尿陰性の腎機能が低下した糖尿病例など病態もいっそう複雑になっています。これらをふまえて,さらなるエビデンスを蓄積するとともに,蛋白質の制限量は個々の病態,リスク,アドヒアランスなどを総合的に判断して設定することが望まれます。
糖尿病性腎症の新たな病期分類が2014年1月に日本腎臓学会,日本糖尿病学会,日本透析医学会のホームページに掲載されました。これに合わせて日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」も2014年5月に改訂され,その食事療法の記載も参考になります。

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