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冠動脈疾患に対するカテーテル 治療の現状

No.4729 (2014年12月13日発行) P.48

木下法之 (康生会武田病院循環器センター部長)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

冠動脈疾患に対するカテーテル治療(血管形成術)の進歩には目覚ましいものがありますが,その中でもバルーン拡張術,ステント留置術,血栓吸引術,ロータブレーター(高速回転ドリル),さらに最近ではレーザー治療も行われているようです。各治療の適応,治療成績,偶発症などを中心に血管形成術の現状について,康生会武田病院・木下法之先生のご教示をお願いします。
【質問者】
江里正弘:医仁会武田総合病院不整脈科部長

【A】

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は,1977年,スイスの医師グルンチッヒによって初めて施行されました。以後,様々なデバイスが開発され,治療に使用されています。現在のPCI合併症は,死亡率約0.1%,急性心筋梗塞約1.5%,冠動脈穿孔0.2%未満,脳梗塞約0.1%と言われています。
PCIに使用されるデバイスは,バルーンカテーテルやステントといった拡張デバイスとプラークを除去するアテレクトミー治療(ロータブレーター,エキシマレーザーなど),血栓吸引カテーテルに分類されます。
バルーンカテーテルには,semi-compliant balloonとnon-compliant balloonがあり,プラークが硬く高圧をかけないと拡張が十分得られない病変には,バルーン圧を高くしていったときに一定の径からあまり変わらないようになっているnon-compliant balloonを用いて治療します。また,バルーンの外側に何本かのワイヤーのついたスコアリングバルーンや鋼のブレードがついたカッティングバルーンがあり,病変に切れ込みを入れ,通常のバルーン拡張に必要な圧力の3分の2から半分の圧力でプラークを拡張できる場合もあります。低い圧力でプラークを拡張すると,病変によっては冠動脈のプラークに大きな解離が発生しなくなります。
さらに,バルーンの表面に再狭窄を予防する効果のある薬が塗ってあり,拡張時に血管壁に染み込ませる薬剤溶出性バルーン(drug-eluting balloon:DEB)が日本でも使用可能となり,ステント再狭窄の治療に使用されています。
しかし,バルーン拡張だけではすぐに血管が狭窄してしまうリコイル現象や大きな冠動脈解離を生じる可能性があるため,ステント留置を行います。ステントは現在,bare metal stent(BMS)と薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)が使用できます。
BMSの再狭窄率は20~30%,急性冠閉塞率は1%未満ですが,DESの場合は再狭窄率は4~8%,急性冠閉塞率は1%未満と言われています。またDESについては,1年以上経って起こる遅発性血栓性閉塞・再狭窄の問題が指摘されていましたが,第2世代のDESでは遅発性血栓性閉塞率がBMSと同等に低くなってきています。また,欧州では生体吸収ステント(everolimus-eluting bioresorbable vascular scaffold:BVS)でも治療可能となっており,日本でも数年後には使用できるようになる予定です。
一方,アテレクトミー治療(ロータブレーター,エキシマレーザー)は,施設認定があり,限られた病院でしか治療できない手技です。
ロータブレーターは,先端のドリル部分に20μmのダイヤモンドが埋め込まれ,1分間に高速回転(6万~20万回転)で,石灰化した動脈硬化をヤスリのように削り取っていくものです。透析患者さんや高齢者では高度な石灰化病変を有することが多く,動脈硬化が石灰化してくると通常のバルーンでは拡張が悪くなり,拡張が悪い状態でステントを留置してもステントそのものが十分に広がらず,再度狭窄をきたす可能性が高くなります。こういった硬い病変に対して,ロータブレーターが使用されます。ロータブレーターのみでは再狭窄率は20~40%,死亡率は約0.8%と言われています。
エキシマレーザーは,カテーテルの先端からレーザーを照射して,閉塞部の血栓や動脈硬化組織を蒸散・除去し,血流を再開させることができます。血栓量が多い急性冠症候群でも血栓・病変組織を蒸散させるため,末梢塞栓をきたさない場合があります。死亡率は約0.6%と言われています。
現在,方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)は,デバイスが発売中止となり治療できませんが,再開が望まれている治療法です。

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