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多血小板血漿(PRP)療法の効果 【比較対照研究では明確な有意差はなし。PRPの品質の安定化が課題】

No.4826 (2016年10月22日発行) P.55

伊藤恵康 (慶友整形外科病院病院長/理事)

金森章浩 (筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻競技スポーツ医学分野講師)

登録日: 2016-10-21

最終更新日: 2016-10-24

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  • 現在,特にスポーツ医学の分野で多血小板血漿(PRP)の利用が増加しつつあるようです。靱帯再建術を要すると思われる症例でも,PRPの局所注射で復帰あるいは早期復帰できるのではと考える患者の気持ちもわからないでもありません。PRP療法の現状と将来の展望をご教示下さい。筑波大学・金森章浩先生のご回答をお願いします。

    【質問者】

    伊藤恵康 慶友整形外科病院病院長/理事


    【回答】

    最近注目を浴びているPRPとは多血小板血漿(platelet rich plasma)の略で,「全血の血小板数より高い濃度の血小板を含む血漿」と定義されます。血小板内に含まれる成長因子をはじめとする様々な生体活性物質を用いて,組織治癒や再生を促進する治療法として歯科口腔外科,形成外科領域で使用されていました。整形外科領域でも軟部組織損傷からの早期復帰を期待して,10年ほど前から欧米のスポーツ医学界を中心にPRP治療が広まっています。PRPは自己血を用いて作成するため,容易かつ安全に治療を行えることより,国内でも使用される頻度が高まっていると思われます。

    関節外の靱帯損傷は,通常保存的治療によって治癒しますが,その治癒には長期間を要し,治癒した靱帯は正常靱帯と比較すると,組織学的にも力学的にも劣ることが知られています。私たちの動物実験では,PRP投与群では治癒靭帯の細胞数や新生血管が多く,また正常に近い膠原線維の走行や高い力学的強度を示し,PRPの靱帯損傷治療への有効性を示しました。靱帯損傷へのPRPの臨床応用の報告は散見されるのみですが,Podestaらはスポーツ選手の肘内側側副靱帯(MCL)の部分断裂にPRPを注射して34選手中30人が平均12週で受傷前と同じレベルのスポーツ活動に復帰し,肘の安定性も回復したと報告しています。この報告が野球選手の肘MCL損傷に対するPRP治療の論理的根拠になっていると思われますが,あくまでもcase series studyであり,比較対照研究ではないことに注意する必要があります。また,完全断裂の場合でのPRPの効果は現時点では不明です。

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