日本循環器学会は17日、「オートファジー」と心血管疾患をテーマにセミナーを開催した。講演した山口修氏(阪大院准教授)は、今回のノーベル医学・生理学賞受賞により、オートファジーと関係ある疾患や現象として、神経変性疾患やがん、老化などに注目が集中している点を踏まえ、「心筋細胞はほとんど細胞分裂できないため、不要物や毒物を希釈することができない。心臓こそ細胞内の分解機構(オートファジー)が重要」と強調した。
山口氏は、心臓でオートファジーが起こらない遺伝子改変マウスを用いた自身らの研究成果を紹介。大動脈を狭めて心臓に負担をかける手術をしたオートファジー欠損マウスと正常マウスの経過を観察したところ、術後1週間で欠損マウスは心臓の収縮力が低下し、心不全になったと説明した。また、動脈硬化の治療薬である降圧薬や高脂血症治療薬が「何らかの形でオートファジーを誘導しているという報告も複数出てきている」と指摘。山口氏はこれらの研究を踏まえ、オートファジーが①心臓への負荷、②心筋梗塞、③老化─に対して心筋細胞を保護する役割を担っているとの考えを示し、オートファジー促進薬の開発で「新しい循環器疾患治療薬につながる可能性がある」と強調した。