膠原病診療では疾患自体の免疫応答の破綻に加え,近年発展した多様な免疫抑制療法の影響もあって,ワクチン接種による感染予防の重要性が報告されている1)。ワクチン接種の効果は抗体価により評価された報告が多いため,臨床的予防効果が十分に検討されているとは言えないが,安全性の観点から接種は妥当である。
膠原病患者にワクチン接種を行う場合,疾患自体や治療薬がワクチンの効果に影響を及ぼす可能性があり,注意が必要である。特に腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)阻害薬とメトトレキサートを併用すると効果が減弱する可能性があるが,ワクチン接種は考慮してよい。
欧州リウマチ学会は,ワクチン接種を疾患の安定した時期に投与することを推奨している2)。また,特に肺炎球菌ワクチンを考慮すべきとし,インフルエンザワクチンに関しては強く推奨している。さらに,リツキシマブに代表されるB細胞標的療法の際には,投与前にワクチン接種をするべきである。一方,生ワクチン接種(BCG含む)は避けたほうがよいが,治療前の接種を勧める報告もある。
ワクチン接種による自己免疫疾患の発症・増悪が懸念されるが,稀であり,基本的には予防の利益を優先していいだろう。有効性について今後のさらなる検討が期待される。
【文献】
1) Westra J, et al:Nat Rev Rheumatol. 2015;11 (3):135-45.
2) van Assen S, et al:Ann Rheum Dis. 2011;70(3): 414-22.
【解説】
村岡 成 東邦大学内科学膠原病学