現在,日本では30万人を超える腎不全患者が透析治療を受けている。しかし,腎不全の進行を遅らせる有効な治療法は今のところない。
この問題を克服するため,近年,腎再生医療に関する研究が精力的に行われている。腎再生促進因子の探索,腎幹細胞の同定,骨髄細胞(造血幹細胞,間葉系幹細胞)を用いた腎再生治療など様々な角度から検討され,有益な知見が着実に集積されている。
最近では,iPS細胞(文献1~3)やES細胞(文献4)を利用した検討も報告された。「iPS細胞→中間中胚葉→腎前駆細胞→尿細管細胞」という腎臓の発生過程を試験管内で効率よく再現する培養条件(文献1)や,ES細胞から中間中胚葉を経由して腎構成細胞へ分化誘導する手法(文献4)が明らかになった。iPS細胞から「血管を含む糸球体が備わった3次元の腎臓の構築」にも成功している(文献2)。腎臓の鋳型を活用した報告もある。ラットの腎臓に洗浄剤を灌流して細胞成分を除去後に鋳型を作成し,そこに上皮細胞と内皮細胞を注入すると新たな腎臓ができ上がる。これをラット体内の元の部位に移植すると,血液が循環し尿が生成された(文献3)。
再生医療関連法案が2014年秋にも施行され,法的にも整備されることから,実現化に向けた再生医療に関する研究はますます加速していくものと思われる。
1) 木下芳一:消化器の臨床. 2013;16(5):535-43.