JSH 2014では,糖尿病を合併した高血圧については基本的に降圧目標値に変化はない。2010年に発表されたACCORD-BP研究(文献1)の結果を受けて,米国糖尿病学会(ADA)では140/80mmHg,ESH-ESC 2013では140/85mmHg,JNC-8では140/90mmHgと,他国のガイドラインではいずれも糖尿病患者の降圧目標が緩和された。脳卒中が多いというわが国の現状を反映して,JSH 2014ではそれらに追従せず,降圧目標を130/80mmHg未満のままとした。
家庭血圧目標値については,JSH 2009では明らかなエビデンスがなかったが,筆者らの報告(文献2)および,HOMED-BPサブ解析の結果(文献3)をふまえて125/75mmHg未満が継承された。ただしINVEST試験のサブ解析等を考慮し,動脈硬化性冠動脈疾患,末梢動脈疾患合併例,高齢者では降圧に伴う臓器灌流低下に対する配慮が必要としている。
推奨する降圧薬は,第一選択薬をARB,ACE阻害薬とし,効果不十分の場合はそれらを増量するか,Ca拮抗薬または利尿薬を併用するというJSH 2009での基本方針を踏襲している。また新たに,2種類以上のRA系阻害薬の併用は直接的レニン阻害薬を含めて推奨されないことが追記された。どうしても併用する場合は注意深い観察が必要である。
1) ACCORD Study Group:N Engl J Med. 2010;362 (17):1575-85.
2) Eguchi K, et al:J Clin Hypertens (Greenwich). 2012;14(7):422-8.
3) Noguchi Y, et al:J Hypertens. 2013;31(8):1593-602.