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原発性免疫不全症候群

No.4713 (2014年08月23日発行) P.54

山田雅文 (北海道大学小児科講師)

有賀 正 (北海道大学小児科教授)

登録日: 2014-08-23

最終更新日: 2016-10-26

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原発性免疫不全症候群(PID)は先天的に免疫系に欠陥がある疾患の総称で,種々の病原体に対し易感染性を呈する。以前は主に獲得免疫系の欠陥を有する疾患を中心に理解されていたが,最近は自然免疫系の欠陥,免疫調整不全,さらには自己炎症性の疾患などもPIDとして分類されるようになり(文献1),易感染性だけでなく,自己免疫疾患や過剰炎症など多彩な臨床症状を呈する疾患の割合が多くなってきている。
治療面でも様々な発展がみられている。低γグロブリン血症に対する治療は,わが国では静注用γグロブリン製剤(IVIG)による補充療法が主体だが,以前は重症感染症における治療に準じるとなっていたために十分量の投与が困難で,感染のコントロールが困難であったり,気管支拡張症が進行した例が見出されたりしていた。2010年には200~600mg/kg体重を3~4週間隔で投与し,さらに患者の状態に応じての適宜増減が可能となり,必要十分量のIVIG投与が可能になった。2014年には皮下注用免疫グロブリン製剤の在宅自己注射が認可された。血管確保が困難な場合も投与可能であり,QOLの向上や投与に伴う副作用の軽減も期待されている(文献2)。
PIDに対する造血幹細胞移植についても,短期的,長期的な移植関連合併症を最小限に抑えつつ,免疫系を構築することを目的とした骨髄非破壊的移植(RIST)が選択される例が増加し,早期診断や移植前管理の改良もあいまって,治療成績の向上がみられている。

【文献】


1) Al-Herz W, et al:Front Immunol. 2014;5:162.
2) Hoernes M, et al:Pediatr Allergy Immunol. 2011;22(8):758-69.

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