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ANCA血管炎の理解の進歩

No.4719 (2014年10月04日発行) P.53

藤尾圭志 (東京大学アレルギー・リウマチ内科講師)

山本一彦 (東京大学アレルギー・リウマチ内科教授)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-26

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抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は好中球などの細胞質顆粒に対する自己抗体で,myeloperoxidase(MPO)を抗原とするMPO-ANCAおよびproteinase-3(P R3)を抗原とするPR3-ANCAに大別される。血管炎の名称・定義を提唱したChapel Hill分類では,ANCA関連血管炎(ANCA-associated vasculitis:AAV)は,ANCA陽性で中小型血管が傷害される血管炎と定義された(文献1)。
従来,欧米では顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)はMPO-ANCA陽性が多いのに対し,気道の肉芽腫性炎症を特徴とする多発血管炎性肉芽腫症(旧ウェゲナー肉芽腫症,granulomatous polyangiitis:GPA)はPR3-ANCA陽性が多いとされ,予後はGPAのほうがMPAよりも不良とされてきた。しかし.日本人を含むアジア人では,MPO-ANCA陽性のGPAが多いことが判明した。
近年,遺伝子多型解析により,遺伝的背景はMPAやGPAといった臨床病型よりもANCAの種類と強く関連すること,また再燃などの予後の関連も,臨床病型よりもANCAの種類と強く関連し,PR3-ANCA陽性では予後不良であることが明らかとなった。ANCAが放出されたクロマチンからなる「好中球細胞外トラップ(NET)」形成を誘導して炎症を惹起することがわかってきたが,その種類により機能が異なる可能性がある。今後はAAVの診断と治療の双方において,どのANCAが陽性であるかを加味することが必要であると考えられる。

【文献】


1) Jennette JC, et al:Arthritis Rheum. 2013; 65(1):1-11.

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