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心臓移植の進歩と植込型人工心臓

No.4723 (2014年11月01日発行) P.48

伊藤誠悟 (天堂大学循環器内科准教授)

登録日: 2014-11-01

最終更新日: 2016-10-26

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世界で初めて心臓移植が行われてから約半世紀が経過し,ようやくわが国でも移植医療が定着してきた。1980年代に開発された強力な免疫抑制薬の登場により,臓器移植治療の成績は劇的に改善した。その後,欧米を中心に移植件数は大幅に増加し,現在,全世界で心臓移植は年間約4000例行われている。
一方,わが国の移植医療では,開始当初に制定した移植に関する厳格なルールの存在と欧米との生命観・死生観の違いから絶対的ドナー不足に陥り,移植件数は年間5~10数件と伸び悩んでいた。その結果,日本人の海外渡航移植が増加し,移植を受け入れた国々の自国民に対する移植機会の減少が問題視され,2008年に移植ツーリズムを禁止し,自国内での臓器提供を推進する「イスタンブール宣言」が提言された。
こうした流れの中,わが国でも2009年に臓器移植法の一部が改正(改正臓器移植法)され,「本人の臓器提供の意思が不明な場合も家族の承認により臓器提供が可能」,「15歳未満の脳死下での臓器提供も可能」となり,移植件数は約3倍に増加した。2013年における国内で心臓移植可能な9施設の心臓移植件数は37件に増加し,治療成績は5年生存率92%ときわめて良好である。
このように,臓器移植を取り巻く環境はこの10年間で大きく変化したが,慢性的ドナー不足はいまだに解消されていない。最近,植込型人工心臓が心臓移植までの代替治療として応用され,良好な治療成績を収めていることから,将来的にdestination治療としての役割も大いに期待されている。

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