近年,乳癌の患者数は増加しており,それに伴って術後QOLの改善を目的として乳房再建を希望する患者も増加している。乳房切除術と同時に行う一期再建,期間をおいて行う二期再建がある。
具体的な手術法は成書にゆずるが,乳房のボリュームを再建する材料は自家組織またはシリコンインプラントを使用する。シリコンインプラントで再建を行う場合,以前は自費診療となり患者は高額な手術費用の負担を強いられていた。しかし,2013年6月よりこれらの医療材料も保険適用となり,患者負担が軽減された。これらのことが,乳房再建を希望する患者が増加した一因と考えられる。
自家組織による再建は,腹直筋と腹部脂肪組織を使用するもの(腹直筋皮弁),広背筋を使用するもの(広背筋皮弁)が以前は主流であったが,近年,腹部脂肪と脂肪を栄養する下腹壁動静脈を使用する深下腹壁動脈穿通枝皮弁(DIEP flap)が主流となりつつある。この皮弁の利点は,腹部脂肪と栄養血管のみを使用するため腹直筋を使用する必要がなく,腹部の合併症を軽減できることである。また近年,自己の吸引した脂肪のみを用いて乳房再建を行うことも試みられているが,生着率が不安定であったり,石灰化を生じるなどの問題も多く,現在のところ安定した方法とはいいがたい。
▼ 酒井成身, 編:乳房再建術update. PEPARS. 84. 全日本病院出版会, 2013.
▼ 小川 玲, 他:脂肪注入と合併症. PEPARS. 77. 全日本病院出版会, 2013, p70-83.