肺動脈性肺高血圧症は肺動脈内腔の狭小化によって肺動脈圧が上昇している状態で,診断は安静時の平均肺動脈圧が25mmHg以上と定義されている。原因としては特発性や遺伝性以外に膠原病に合併することがあり,混合性結合組織病(MCTD)や強皮症患者に原因不明の労作時呼吸困難が出現した場合は心臓超音波検査や右心カテーテル検査を行い,肺高血圧症合併についての精査が必要である。
以前は肺高血圧症に有効な治療薬が乏しく予後不良な疾患であったが,近年では血管拡張薬の開発が進み,肺血管拡張療法が治療の中心になっている。
肺血管拡張薬はエンドセリン受容体拮抗薬(アンブリセンタン,ボセンタン),ホスホジエステラーゼ-5阻害薬(シルデナフィル,タダラフィル),プロスタグランジンI2誘導体(エポプロステノール,ベラプロスト)の3系統が使用可能である。エポプロステノールは点滴薬であり,これ以外は内服薬である。重症度によって薬剤を選択するが,軽症例では内服薬単剤で治療を開始し,重症例では併用療法やエポプロステノール持続静注を考慮する。これらの治療薬により死亡率の減少が報告されており(文献1),肺高血圧症の予後の改善が認められている。
現在,肺高血圧症に対する分子標的治療薬の開発が進められており,今後のさらなる治療効果の改善が期待される。
1) Galie N, et al:Eur Heart J. 2009;30(4):394-403.