頭蓋顎顔面外科領域の骨切り術や骨折に対する整復手術では,四肢骨ほど荷重がかからない部位でもあることから,1970年代までは主にワイヤーによる締結固定が行われていた。80年代に入って,プレートシステムによる固定が主流となり,その材質も当初はステンレス・スチールやバイタリウムであったが,長期的には腐食の問題もあり,またCTでのアーチファクトや強磁場であるMRI撮影に不向きであることから,現在はほとんどチタン製になっている。また,プレートの大きさや形状も多様化し,ミニプレートやマイクロプレートなど様々なシステムが登場している。
これらプレートシステムはワイヤーに比べて操作が簡便で,3次元的で強固な固定力を有するために,それまで固定困難であった小骨片や移植骨の固定なども容易となり,治療法の変革さえもたらすほどの画期的手段となった。しかし,チタン製であっても皮膚の薄い部位ではプレートの触知や異物感の訴えがあり,時に感染などを生じることから,抜去せざるをえないこともあった。
90年代後半からはポリ-L-乳酸を主成分とする生体吸収性プレートシステムが登場したが,金属製に比べて強度が低く,またプレートの加工やスクリューの操作性に難があった。しかし近年,材質の改良などにより操作性が向上し,金属には及ばないものの,皮質骨と同程度の強度を有するものなどが開発されてきている。今後,ますます進歩が期待されている分野である。
▼ 江口智明:頭蓋顎顔面外科:最近の進歩. 改訂第2版. 波利井清紀, 監. 克誠堂出版, 2008, p31-8.