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小児心筋症の分子遺伝学

No.4748 (2015年04月25日発行) P.57

武田充人 (北海道大学小児科)

有賀 正 (北海道大学小児科教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-26

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小児発症の心筋症はかつてほとんどが原因不明であったが,分子遺伝学の進歩により次々と病因遺伝子が同定された。現行の心筋症におけるAHAガイドラインでも大分類の項目に“genetic”と明記されてきている(文献1)。
中でも肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)の遺伝子変異は心筋βミオシン重鎖,心筋トロポニンT,心筋ミオシン結合蛋白Cといったサルコメア関連遺伝子を中心に16種類以上,1400以上の変異が報告されており,家族性HCMにおける発症前診断,遺伝カウンセリングは,小児領域において今後重要な役割を果たしてくるものと思われる。
乳児期発症の心筋症は,全身性疾患に伴う二次性心筋症との鑑別が重要である。Pompe病,Fabry病,Danon病,Barth症候群,Noonan症候群,LEOPARD症候群などが知られており,責任遺伝子がほぼ同定されている。
神経筋疾患と心筋症との関連については,進行性筋ジストロフィー症における心筋症のほか,ジストロフィン関連遺伝子変異や核膜蛋白遺伝子変異,ミトコンドリア異常(ミトコンドリアDNAや核DNA異常による)などによって,骨格筋と心筋に異常を引き起こす疾患が明らかにされてきている。筋症状が軽微であれば心筋症が唯一の表現形になりうる場合があり,小児心筋症の鑑別診断における選択肢をより幅広く考慮すべき状況となってきている。

【文献】


1) Maron BJ, et al:Circulation. 2006;113(14): 1807-16.

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