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服薬アドヒアランスへの期待

No.4750 (2015年05月09日発行) P.50

長谷川純一 (鳥取大学薬物治療学教授)

登録日: 2015-05-09

最終更新日: 2016-10-26

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各種疾患の治療において,医師が薬剤を処方するとともに行う服薬指導を患者が遵守し,十分な薬効が期待できる状況について,患者の服薬コンプライアンスが良好であるとの表現が用いられてきた。一方,近年,同じような表現として服薬アドヒアランスという言葉が用いられることが多くなっている。
いかに有用性の高い薬でも,医師の期待ほど服用されていない可能性があり,いかに指示を守ってもらい治療効果を上げるかという観点から,服薬コンプライアンスが評価されてきた。この時点ではパターナリズム的な,患者のことを思う医師の指示には,全幅の信頼を置いて従うべきであるという考えが根底にあり,その指示に従うか否かが重要な関心事であった。
しかし,近年では治療法や処方薬に関する医師の説明,提案に対する患者の選択,同意が重視されるようになり,医師の治療方針のもとで,いかに患者が能動的に自身の治療に参画するかということが問われるようになった。そこで,パートナーシップとして患者自身が治療に積極的に関わる意味での服薬遵守を図る言葉として,服薬アドヒアランスが用いられるようになってきた。半ば強制的に指示された事柄は,忘れても,従わなくてもそれまでであるが,自分の疾病をいかに治療しようか努めている状況とは,心構えからして異なることは明らかであり,薬効が期待できると思われる。言葉だけでなく,すべての患者がこのような気持ちを持ってくれることを望むものである。

【参考】

▼ 中野眞汎:臨床薬理学. 第3版. 日本臨床薬理学会, 編. 医学書院, 2011, p195-8.

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