骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)は遺伝子異常を持つクローン性造血幹細胞疾患であり,血球減少や急性骨髄性白血病への移行が特に問題となる。芽球の割合や染色体異常,血球減少の程度を用いたInternational Prognostic Scoring System(IPSS)やその改訂版であるIPSS-Rといった予後予測指標が有用で,血球減少が主な問題となる低リスクMDSと,早期の白血病化が危惧される高リスクMDSに分類される。高リスクMDSではメチル化阻害薬の投与や同種造血幹細胞移植が行われる一方,低リスクMDSでは輸血などによる保存的治療が主となるが,頻回の輸血は鉄過剰症による心機能障害や肝障害を生じ,医療経済的にも負担となる。
海外では血清エリスロポエチン(EPO)濃度が500mU/mL以下の症例を中心にEPO補充療法の有用性が示されており(文献1),ガイドラインでも推奨されているが(文献2),これまで日本では,EPO製剤の保険適用は腎性貧血などに限られており,保険診療でのMDS患者に対する投与は困難であった。2014年12月に持続型赤血球造血刺激因子製剤ダルベポエチンアルファにおいて,MDSに伴う貧血に対して適応追加の申請がされており,これが承認されれば輸血頻度の軽減やQOLの向上が期待される。ただし,一般的に推奨されているのは週1回以上の投与であり,患者の通院負担を軽減するためにも,地域の病院との連携が望ましいかもしれない。
1) Greenberg PL, et al:Blood. 2009;114(12):2393- 400.
2) Fenaux P, et al:Ann Oncol. 2014;25(Suppl 3): iii57-69.