株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

難治性うつ病の要因と治療

No.4755 (2015年06月13日発行) P.53

吉村玲児 (産業医科大学精神医学教授)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

難治性うつ病の定義は,1種類の抗うつ薬を十分量・十分期間使用しても,不十分な反応しか得られない場合をいう。しかし最近では,少なくともカテゴリーの異なる2種類の抗うつ薬を十分量・十分期間使用しても,部分的な反応しか得られない症例を指す場合が多い。
難治性うつ病の頻度に関する十分なエビデンスはないが,一般的には標準的なうつ病の治療を行っても2~3割が難治化・遷延化すると言われている。したがって,難治性うつ病は決して稀な疾患ではない。うつ病が難治化する要因は,(1)うつ病を発症してから治療開始までの期間が長い,(2)身体疾患の合併,(3)不安障害の合併,(4)アルコールや薬物依存,(5)高齢者,(6)ストレス要因解消が困難な場合,などが挙げられる。また,非難治性うつ病と比較して自殺のリスクが高いので,直ちに精神科専門医に紹介することが望ましい。
難治性うつ病の治療は,(1)先行投与されている抗うつ薬にリチウムやアリピプラゾールなど非定型抗精神病薬の追加投与(アリピプラゾールの場合は3~6mg/日程度にとどめるべきである),(2)経頭蓋的磁気刺激療法と抗うつ薬の併用,(3)修正型電気痙攣療法,(4)薬物療法と認知行動療法の併用,などが考えられる。リスクとベネフィットを考えて個々の症例に応じたストラテジーが選択されるべきである。
すなわち,難治性うつ病に対しては、難治化,遷延化させている原因(生物学的要因のみならず心理社会的要因)を明らかにし,きめ細かい個別の対応が行われることが望まれる。

【参考】

▼ 中村 純, 編:抗うつ薬プラクティカルガイド. 中外医学社, 2011.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top