生活習慣病による慢性腎臓病(CKD)は増加の一途をたどり,新規透析導入患者の原因の第1位は糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)で,日本透析医学会による2013年の統計では全体の43.8%を占めている。しかしながら,最近では糖尿病の治療の向上と,腎機能保持の改善に伴う患者の高齢化によって,以前のように初期の糸球体過剰濾過から,微量アルブミン尿,顕性蛋白尿を経てネフローゼとなり,腎機能が低下して末期腎不全に至るという,典型的な糖尿病性腎症の患者が少なくなってきた。
一方,糖尿病でありながら蛋白尿の顕著な増加を伴わずに腎機能が低下していく症例は増加しており,腎硬化症との区別はあいまいになってきている。K/DOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)は,「病理診断が確定している場合は糖尿病性糸球体症(diabetic glomerulopathy)とし,そうでない場合は糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)と呼ぶ」ことを提唱している(文献1)が,いまだ一般化しておらず,様々な用語が使用されている。
最近の臨床研究では,糖尿病のあるCKD患者という対象を採用するものもあり(文献2,3),用語の定義の再確認と明確化が必要である。
1) KDOQI:Am J Kidney Dis. 2007;49(2 Suppl 2):S12-154.
2) de Zeeuw D, et al:N Engl J Med. 2013;369(26):2492-503.
3) Tuttle KR, et al:Am J Kidney Dis. 2014;64(4):510-33.