人工弁置換術後や心房細動の患者には,長期にわたる抗凝固療法が必要である。これらの患者の20~30%が虚血性心疾患を発症し,その多くがステント術によるPCIを受けることになるが,PCI後の一定期間はステント血栓症の予防のために,アスピリンとクロピドグレルの2種類による抗血小板療法(DAPT)が適応となる。このように,抗凝固薬内服中の患者にPCIが施行された場合,3剤併用治療(抗凝固薬+クロピドグレル+アスピリン)が推奨されているが(文献1),抗凝固薬とDAPTによる3剤併用療法は,重篤な出血リスクを増大させる。そこで,欧州で多施設共同無作為化対照試験が実施され,3剤併用と2剤併用(抗凝固薬+クロピドグレル)の安全性と有効性が検討された(文献2)。
一次評価項目である1年以内の出血イベントのハザード比は3剤併用群に比し2剤併用群では0.36(95%CI;0.26~0.50)であり,消化管出血のリスクも1/3前後に低下した。二次評価項目である死亡,心筋梗塞,脳卒中などのイベントのハザード比は0.56(95%CI;0.35~0.91)であった。すなわち,2剤併用療法では,3剤併用療法に比較して出血の合併は減少する一方で,血栓性イベントの発生は増加せず,アスピリンを加えない2剤併用(抗凝固薬+クロピドグレル)の安全性と有効性が示されたと言える。
抗血栓療法に伴う消化管出血(潰瘍出血,憩室出血など)のリスクの増大に対応する消化器内科医にとっては,きわめて重要な情報である。
1) Lip GY, et al:Thromb Haemost. 2010;103(1):13-28.
2) Dewilde WJ, et al:Lancet. 2013;381(9872):1107-15.